【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「私とのセックスじゃ満足出来ないって言われた時、本当にショックでさ……。相性がいいと思ってたのは私だけだったんだと思うと、なんか心にポッカリと穴が開いたみたいになってるんだよね」

「豊佳、あんな最低野郎の言うことなんて真に受ける必要ないって」

 と聖乃は慰めてくれるけど、私はその言葉が忘れられそうにない気がする。

「大丈夫? あんまりアイツの言うことなんて気にする必要ないよ。もう過去の人なんだから」

「過去の人……か」

 確かに私たちの関係は終わった。二年という期間は長いようで短くて、なんだかあっという間にすぎてもしまった。
 ようやく私も、人並みの幸せを掴めると思っていた矢先の出来事だった。 掴んでいた幸せが崩れていくのは本当に一瞬で、あっけなかった。

「失礼します。コーヒーのおかわりはいかがですか?」

 そんなことを考えていた時、若い男性のスタッフさんが私たちにコーヒーのおかわりを聞いてきた。
 
「じゃあお願いします」

「かしこまりました」

 ここのコーヒーショップは二杯目から半額の値段でおかわりが出来るとあって、いつも賑わっている印象がある。

「お客様はいかがなさいますか?」

「じゃあお願いします」

「かしこまりました」
 
 私もせっかくなので、二回目のカフェラテを注文した。

「ねえねえ、豊佳?」

「ん?」

「さっきのあの人、カッコよくない?」

 聖乃がさっきのコーヒーのおかわりを聞いてきたスタッフさんに、視線を向ける。