「翡翠、本当にありがとう」
「ん?」
「感謝してる、本当に」
ここまで来られたのは、紛れもなく翡翠たちのおかげだ。
「さ、早く家の中に入れ」
「うん」
そして二号店の店の裏のマンションに、私たちは住み始めた。
これから家族三人で過ごす家は、子供が快適に暮らせるように選んだ。
店のすぐ裏に家があるって、なんか新鮮だけど、住心地は最高だ。
「翡翠」
「ん?」
「今日も頑張ってね、おもてなしの心を忘れずにね」
おもてなしの心忘れるべからず。希望の丘がモットーにしていること。
「わかってるよ」
「何かあったらすぐに呼んでね」
「わかってるよ」
翡翠をお店へ送り出し、私は家の中へ戻った。
マンションのベランダからはお店の外が見えるのだけど、いつも賑わっているのが人目でわかる。
「ほら、パパ頑張ってるよ」
大きくなってきたお腹を擦りながら、お腹の赤ちゃんに話しかけると、赤ちゃんが動いている。
現在妊娠七ヶ月の私は、無理をしないように今はお店の仕事をセーブしている。 ギリギリまで働くことも考えたが、翡翠が心配するのでセーブすることを決めた。
一度目の流産の時も、二度目の流産の時も、翡翠はかなり心配していて、流産したのは仕事をさせた自分のせいだと自分を責めていたからこそ、今回はしっかりと翡翠に心配をかけないようにしたい。
翡翠が悪い訳でもないのに、自分を責めていた翡翠を見て、私も心苦しく思っていたのは確かだったから。
今度こそ、ちゃんと元気な子を産みたい。



