「いいんだよ。アイツは優秀だからな。 アイツならきっとやれるさ」
「そうだね。翡翠が見込んだ人だもんね」
「ああ、俺の目に狂いはなさいさ」
当時高校生だった早坂くんは、卒業後の進路として希望の丘に就職をしたいと、翡翠に申し出ていた。
希望の丘でもっと働きたいと、翡翠の元でもっともっと学びたいと、自ら希望の丘に就職することを志願したのだ。
そんな早坂くんも、一号店での勤務を経験し、そして翡翠さんの元で修行し独り立ちをした。
今度は一号店のシェフとして、頑張る姿を見せてくれるだろう。きっと彼は、仲間を大切にしてくれる。
「私たちにも、もうすぐ家族が増えるし。もっと頑張らないとね、パパ」
「ああ、そうだな。頑張らないとな、俺も」
「そうだよ、頑張ってよパパ」
そして私のお腹にももう一人家族がいる。翡翠との間に子供が出来て、私たちはさらに頑張らないとならない。
「家族が増えるって、いいな」
「うん。いいね」
明るくて楽しい家庭にしたい。この子がすくすくと育つように、しっかりとサポートしたい。
「ちょっと肌寒くなってきたな」
「そうだね」
「豊佳は今大事な時期なんだから、身体冷やさないように上着着ておけ」
「わかった」
待望の第一子を妊娠中の私だけど、実はそれまで二度の流産を経験した。その悲しみを乗り越えて、やっと授かった赤ちゃんだった。
二度流産した時は、本当に辛くて仕方なかったし、悲しかった。 けど翡翠や家族が支えてくれたおかげで、また私は立ち直ることが出来たのだった。



