その日は、私と彼の二年の記念日になる日の前日だった。二年経っても、私たちの交際は順調だった。
この間彼から話があると告げられていた私は、もしかしたらプロポーズしてくれるかも?なんて、淡い期待を持ってしまっていた。
だけどそんな私の淡い期待を、打ち砕くような現実を見てしまったーーー。
記念日の前日、私は龍樹にサプライズで料理を作ろうと思い、龍樹の家に来る前にスーパーに寄った。龍樹の大好きなシチューを作ろうと思い、食材を買って。
そして私は、何も知らないまま龍樹の家の玄関を開けた。
だけど龍樹の家の玄関には、明らかに私のものではない赤いパンプスが並べられていた。 そのパンプスに見覚えのない私は、なんだか胸の奥で嫌な予感がした。
龍樹の姿を探してリビングもバスルームもベッドルームも見たけど、龍樹の姿はどこにもなかった。
だけど一つだけ見ていない部屋がある。 そこは、龍樹が趣味部屋にしているという部屋だ。
龍樹は趣味でバンドをやっていて、一つだけ防音対策をしているという部屋があるという話だった。
ただ、龍樹はその部屋を私には見せてはくれなかった。誰にも見られたくないから、と。
そう、そこは龍樹しか知らない特別な部屋なのだ。
私は一つため息を吐き、そっとその寝室の奥にある扉に耳を澄ませる。 すると扉の向こうから、ギシギシという音が少し聞こえてきた。
私はドアノブに手を掛けて、静かにドアを開けた。そして扉の奥を少し覗きんだ。



