劣情にmistake



放課後、屋上。

予定もないのにすぐに帰宅するのがなんだか嫌で、わたしは時々ここで時間を潰したりする。言わばわたしの逃げ場所だ。


「りりこ」

屋上のフェンスに手をかけたところで、後ろから聞き覚えのある声がした。

思わず振り向くと、そこには見知った綺麗な顔がある。


「えっ、夏川くん?!」

「なに驚いてんの」

「いやいや、突然現れる方がどうかしてるよ? てかここ学校だし、そもそも夏川くんって明るい時間も存在するんだ……」

「問題ない、りりこ以外には姿見えないし。てか別に昼とか夜とか関係ない」


私以外に姿が見えないの? それは初耳だ。

だとしても、誰もいない空間にひとりで会話をしているところを見られたら、かなりアブナイ人認定されちゃいそうだけど。


「いつも夜にしか現れないからてっきり明るい時間帯はダメなのかと……朝もいなかったし」

「まあ確かに、太陽は苦手だな」


もうすぐ夕方だけれど、まだ陽は出ている。

そう言われれば、確かに校舎の日陰に入っている夏川くん。直射日光は苦手なのかな。


「りりこ、アイツでもいいよ。代わりに殺したい奴」

「え?」

「スズコとか言う奴。さっき話してたろ」

「えっ、聞いてたの?!  どこから?!」


「今日1日、というかおまえと初めて会った時からずっと、姿が見えないように近くにいるからね」

「そんなストーカーみたいなことしなくても……」

「死ぬのを管理するのが俺の仕事って言っただろ」

「思考が死神すぎる……」


だとしても、姿が見えないんじゃこっちも気が気じゃないよ。

いつ見られてるのかわからないなんて。

あ、でも、どうせ明日死ぬならなんでもいいのかな。