大体、わたしを生かしたのは”たまたま”だなんて言うくせに、どうしてこんなにわたしに構うんだろう。
ふと視線を上げて夏川くんを見ると、夏川くんもわたしを見ていてどきりと心臓が鳴った。
暗闇の狭いベットの中。彼の呼吸の音がよく聞こえる。心臓がないなんて信じられない。
目線が絡んだまま、ゆっくり夏川くんの手がわたしの頭に添えられて、そのまま髪を撫でられた。
「おまえ、本当に生意気だね」
「な、なにが……」
「ま、そういう睨んだ顔もそそるけど」
防衛反応、というものだろうか。
いくら夏川くんが人間の姿をしていても、所詮は死神。
無意識のうちに彼に睨みをきかせていたみたい。そんなつもりなかったのに。
「ご、ごめんなさい……。睨んでるつもりはなかったんだけど……」
「別に怒ってねえよ。人間と死神なんてそんなもん。この世界で顔を合わせたらおまえたちは無意識に俺らを警戒すんのが当たり前」
それは、そうかもしれないけど。夏川くんは、死神だけど。
でも、わたしを生かしてくれたのだって夏川くんでしょ。
「でも、夏川くんのこと、怖いとは思ってないよ」
咄嗟に出たそんな言葉に、驚いたのはわたしの方だ。
わたしの髪を撫でていた夏川くんの手がほんの僅かに止まった気がした。



