劣情にmistake



わたしがつくったカレーを頬張った夏川くんは珍しく目を輝かせて「美味しい」とつぶやいた。

死神なのに味覚はあるのか。


そういえば、この家でこんな風に食卓を囲むのはいつ以来だっけ。

たまに帰ってくるお父さんも、食事を共にすることは殆どない。忙しいんだから仕方ないけどね。

誰かに食べてもらうのも、美味しいを共有するのも、思えば本当に久しぶりのことだった。



「それで、夏川くんはいつまでここにいるの」

「あーね。今日も帰ろうかと思ったけどやめた」

「え、やめたって?」

「誰もいないならここで寝泊まりしてもいいだろ、無駄に広いし」


「えーっと、ずっと思ってたけど、夏川くんって結構自分勝手だよね?」

「死神に対してずいぶん生意気な態度取るねおまえ」

「そんな生意気な奴を生かしたのは夏川くんでしょ!」

「はは、強気な女は好きだよ」


また冗談を言ってのける。


「住むって言っても2泊3日でしょ」

「まーね。それまでにりりこが殺したい奴決めるの監視しなきゃだし」

「監視って……」

「ちなみに言っとくけど、死神も人間と同じように性欲あるから」

「は、はあ?!」

「ま、あんま欲情させないでねって話」


 
何を言うんだこの死神─────
 
何も返せずにわなわなと震えていると、ふは、と吹き出してぽんぽんとわたしの頭を撫でた。まるで子ども扱いだ。


「冗談。さっさと風呂入ってきな」


わたしを揶揄うのが上手すぎる! 

拗ねたふりをして「もーいい」と言うとまたわらう。

夏川くんは意外とやさしい顔で笑うみたい。ギャップが凄くて調子狂っちゃうよ。