劣情にmistake

意味がよくわからない。
それに、無事しぬようにって言い方もなんかヘン。


「人が死ぬ日って各々予め決まってるんだよ。そういう……いわゆる運命?の歯車が狂わないようにするのが死神」

「………運命、」


ということは私は、今日、死ぬ運命だった。

ほんの数分までは本気にしていなかったハナシが、今になってようやく現実味を帯びた。


本来、私はもう死んでいるはずだった。
だけど今生きている。

私が生きているのは、夏川くんが生かしているから。
──────どうして?


「夏川くん、助けてくれたんだよね」

「助けた?」

「トラックの事故に巻き込まれて死ぬ運命だったって言ったじゃん。あれは嘘なの?」

「嘘じゃないよ。伊藤りりこは今日死ぬ運命だった。俺が邪魔をしたから死ななかった」


「うん。そうだよね。どうして助けてくれたの?」

「助けようと思ったわけじゃない。悪いけど、死ぬのが可哀想とかそんなことは微塵も思わなかった。なんとなく生かしてみただけ。どうなるかなって」

「な……」


どうなるかなって……まるで人を玩具みたいに。
いや、そのおかげで今生きてるわけだから強く文句は言えないんだけど。