劣情にmistake

「人間はいいなって、ときどき思うんだよね。過去と未来に挟まれて、ちゃんと今があるから」

風にかき消されたのか、はたまた夏川くんが意図的にトーンを落としたのか。
セリフを聞き取ることはできなかった。


「──とまあ、俺のハナシはこんな感じかなー。早く殺したい人間教えてよ」

「え、うっ……でもまだ、わからないことがたくさんあるし……」

「はあ? 面倒くさいな、他には何が知りたいの」

「んー……そうだなあ、えっと、そう、あれ」



嘘、ごめんなさい、もう特に思いつかない。
自分でもなんでこんなことを言ったのかよくわからない。


もう少しだけ話していたいって、一緒にいたいって思っちゃったのかも。

どうせ、家には誰もいないから。
──────不覚。


「夏川くんは……死神は……どうやって、人の命を奪うの?」

尋ねるつもりはなかった質問が、苦しまぎれに零れた。


「いい質問だけど、まず大前提、俺たちの使命は命を奪うことじゃなくて、その人が死ぬべき日に無事死ぬように管理するってのが正しいかな」

「……はあ……管理する……?」