劣情にmistake




夏川くんは色んなことを教えてくれた。


前述の通り、死神(って言葉は夏川くんいわく俗っぽくて嫌いらしいけど、他に言いようがないので仕方ない)は、死んだ人たちの中から選出される。

その姿かたちは、死んだ当時を写したもの。

生きていたときの記憶はすべて奪われるけど、本人の性格や嗜好などの中身はそのまま反映される。


つまり、夏川くんは見た目が高校生くらいのなので、推定17歳の夏の日、川で亡くなった……ということ。


──────これもあくまで“上の連中が言うには”、らしい。

死神になる前の記憶を奪われているので真偽は確かめようがないんだとか。


人間として生きていた時代なんて、本当はなかったのかもしれない。

夏の日に川で死んだ“──くん”なんて存在しなかったのかもしれない。

そんなふうに言っていた。


へえ、そうなんだ。
夏川くんは初めから死神の夏川くんでしかなかった。
そういう可能性もあるかもしれないんだね。


ところで……“初めから”の“初め”って……いつなんだろう。