劣情にmistake


「はは、真っ赤な顔」

「〜っ、わ、私たち初対面だよねっ? 冗談でもしていいことと悪いことがあると思うんだけど……っ」


「“だいたいできる”ことの一例をわかりやすく示してあげただけ」

「もうわかったっ、もういいからっ!」


さっきまでの恐ろしさはどこへ行ったのか。

暴力的に綺麗なお顔だとか綺麗すぎて手が届かない存在だとか、ちょっと買いかぶりすぎてたかも。

今は、めちゃくちゃ顔がいい(中身はその辺にいる)ただの男子高校生にしか見えない──


「ま、茶番はこの辺にして。本題に戻るけど、殺してほしい人間をひとり教えて」


──────いや、撤回。

この人(?)やっぱり普通に普通じゃない。

初めと同じ異様な静けさだけを纏った声に、私はごくりと息を呑む。