* 「お嬢様、正気ですか?」 「失礼ね、私はいつだって正気よ」 とある駐車場の一角。私は珍しく露骨に困惑の表情を浮かべた竜胆(りんどう)と対峙していた。 ドアは開けているものの未だ運転席に座っている竜胆を、逃さないと言わんばかりに外からじぃっと見つめる。 「パパとママに言いつけてもいいの?」 「……それは」 「なら、観念しなさい」 そう強く言い放つと、私は眉根を寄せるその人の黒いジャケットにそおっと手をかけた。