優しくしないで、好きって言って






「お嬢様、正気ですか?」

「失礼ね、私はいつだって正気よ」


 とある駐車場の一角。私は珍しく露骨に困惑の表情を浮かべた竜胆(りんどう)と対峙していた。

 ドアは開けているものの未だ運転席に座っている竜胆を、逃さないと言わんばかりに外からじぃっと見つめる。


「パパとママに言いつけてもいいの?」

「……それは」

「なら、観念しなさい」


 そう強く言い放つと、私は眉根を寄せるその人の黒いジャケットにそおっと手をかけた。