「副社長、お待たせしました」
ワンピースに着替えた沙穂を連れて、芹奈はロビーで待っていた翔と村尾のところへ行く。
「沙穂さん、具合はいかがですか?」
「もう大丈夫です。神蔵さん、大変ご迷惑をおかけいたしました」
「いいえ。それではご自宅までお送りいたします」
「はい。ありがとうございます」
村尾が車を回してくると、芹奈はドアを開けて沙穂と翔を後部座席に促し、自分は助手席に座った。
走り出した車内で、沙穂は改めて翔に頭を下げる。
「神蔵さん、本日は色々とありがとうございました。満足にお話相手にもならず、申し訳ありません」
「いいえ、どうぞお気になさらず」
「ありがとうございます。それで、帰ったら父に聞かれると思います。どうだったのか?と。私、正直に自分の気持ちを話してもよろしいでしょうか?」
「もちろんです」
「では、父にはこう伝えます。神蔵さんはとても素敵で優しく、私とは別世界の方ですと。今の私は、およそ誰かとおつき合いするに値しない。これからは自分の足できちんと人生を歩いていきたいです。そしていつか、自分に自信が持てるようになって、誰かを好きになることがあったら……。その時に初めて恋をしてみたいと思います」
芹奈も村尾も、じっと前を向いたまま口をつぐむ。
やがて翔が、ふっと優しく微笑む気配がした。
「分かりました。あなたの歩む道を、私も陰ながら応援いたします」
「はい!ありがとうございます」
明るい沙穂の声がして、芹奈も思わず頬を緩める。
しばらくして豪邸のような沙穂の自宅に着くと、芹奈は後ろのドアを開けて沙穂に手を貸した。
「里見さん、本当にありがとうございました!私、今日里見さんとお知り合いになれたことが何より嬉しいです」
「ふふっ、私もです。沙穂さん、またお会いしましょうね」
「はい、必ず!」
二人は笑顔で頷き合った。
「なーんか彼女、芹奈とお見合いしたみたいだな。で、相思相愛になったって感じ」
会社に向かいながら、ハンドルを握る村尾が芹奈に呟く。
「えへへー、羨ましいでしょ?かーわいいんだよー?沙穂さんのにこって笑顔。もう胸キュン!」
「はいー?マジでおつき合い始めるのか?二人とも」
「うん。連絡先も交換したもんね」
「なんだよー、マジかよー」
あはは!と明るく笑う芹奈を、後部座席から翔が優しく見守る。
(沙穂さんも、俺なんかより里見さんの方が良かったんだろうな。そりゃそうだ。里見さんはこんなにも素敵な女性なんだから。それにしても、俺ってフラれてばっかりだな)
ガックリと肩を落とすが、楽しそうな芹奈の姿に、翔はまた顔をほころばせた。
ワンピースに着替えた沙穂を連れて、芹奈はロビーで待っていた翔と村尾のところへ行く。
「沙穂さん、具合はいかがですか?」
「もう大丈夫です。神蔵さん、大変ご迷惑をおかけいたしました」
「いいえ。それではご自宅までお送りいたします」
「はい。ありがとうございます」
村尾が車を回してくると、芹奈はドアを開けて沙穂と翔を後部座席に促し、自分は助手席に座った。
走り出した車内で、沙穂は改めて翔に頭を下げる。
「神蔵さん、本日は色々とありがとうございました。満足にお話相手にもならず、申し訳ありません」
「いいえ、どうぞお気になさらず」
「ありがとうございます。それで、帰ったら父に聞かれると思います。どうだったのか?と。私、正直に自分の気持ちを話してもよろしいでしょうか?」
「もちろんです」
「では、父にはこう伝えます。神蔵さんはとても素敵で優しく、私とは別世界の方ですと。今の私は、およそ誰かとおつき合いするに値しない。これからは自分の足できちんと人生を歩いていきたいです。そしていつか、自分に自信が持てるようになって、誰かを好きになることがあったら……。その時に初めて恋をしてみたいと思います」
芹奈も村尾も、じっと前を向いたまま口をつぐむ。
やがて翔が、ふっと優しく微笑む気配がした。
「分かりました。あなたの歩む道を、私も陰ながら応援いたします」
「はい!ありがとうございます」
明るい沙穂の声がして、芹奈も思わず頬を緩める。
しばらくして豪邸のような沙穂の自宅に着くと、芹奈は後ろのドアを開けて沙穂に手を貸した。
「里見さん、本当にありがとうございました!私、今日里見さんとお知り合いになれたことが何より嬉しいです」
「ふふっ、私もです。沙穂さん、またお会いしましょうね」
「はい、必ず!」
二人は笑顔で頷き合った。
「なーんか彼女、芹奈とお見合いしたみたいだな。で、相思相愛になったって感じ」
会社に向かいながら、ハンドルを握る村尾が芹奈に呟く。
「えへへー、羨ましいでしょ?かーわいいんだよー?沙穂さんのにこって笑顔。もう胸キュン!」
「はいー?マジでおつき合い始めるのか?二人とも」
「うん。連絡先も交換したもんね」
「なんだよー、マジかよー」
あはは!と明るく笑う芹奈を、後部座席から翔が優しく見守る。
(沙穂さんも、俺なんかより里見さんの方が良かったんだろうな。そりゃそうだ。里見さんはこんなにも素敵な女性なんだから。それにしても、俺ってフラれてばっかりだな)
ガックリと肩を落とすが、楽しそうな芹奈の姿に、翔はまた顔をほころばせた。



