「どうぞ、ミルクティーね。起き上がれる?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
半身を起こす沙穂を手伝い、二人で紅茶を飲む。
「あの、里見さん」
「なあに?」
「私、お見合いなんて初めてなんです。どうしたらいいでしょう?」
え、それは、と芹奈は言葉に詰まる。
「私からは何も……。沙穂さんの気持ち次第じゃないかしら?」
「そうですよね。すみません、変なことを聞いてしまって……。私、お仕事も出来ないし、このまま父の勧める縁談を受け入れるしかないと思っています。だけどこんな私と一緒になるなんて、お相手の方に申し訳なくて」
今日初めて会ってから、沙穂はずっと自信なさげにうつむいている。
そう思い、芹奈は言葉を選んだ。
「沙穂さんが、この人と結婚したいと思ったらそう伝えればいいと思う。でも相手に気を遣ったり、自分の気持ちに嘘をつく必要はないんじゃないかな?お父上だって、沙穂さんの幸せを何より願っていらっしゃると思うの。沙穂さんが自分で幸せになれる道を選んだらいいのよ」
「私が、選ぶ?」
「そうよ。それに、自分はお仕事も出来ないなんて決めつけないで。やりたいと思ったらやってみたら?」
「でも私なんかが働いたら、失敗ばかりで何の役にも立たないと思います。周りの方にご迷惑になるだけです」
芹奈は、うーん、としばし宙に目をやる。
「沙穂さんから見たら私はちゃんと働いてるように見えるかもしれないけど、私だって日々失敗だらけなのよ?」
「そうなんですか?」
「もちろん。特に新人の頃なんて、先輩に何度教わっても覚えられなくてご迷惑ばかりかけてた。そんな私も入社6年目になって、今は新入社員の後輩にこう言ってるの。最初は会社に来るだけでえらいわよって。まず1つ目の目標は、社内で迷子にならないことって」
すると沙穂は、キョトンとしてから笑い出す。
「迷子にならないこと、ですか?」
「そう。だって私、新人の頃に社内で迷子になって、社食から秘書室に帰れなくなったんだもん」
「えー、すごいですね。ふふふ」
「すごいでしょ?」
だからね、と芹奈は沙穂に笑いかける。
「最初は何も出来なくて当たり前。完璧なんて目指さなくていいの。人に迷惑だって、かけてもいいの。その分、いつか誰かに優しく出来たら。そうやって支え合う職場が必ず見つかるから。小さな1歩から始めればいい。だめだって思ったら、また別の道を探せばいいの。大丈夫。沙穂さんなら、適当に肩の力抜いてちょうどいいくらいよ」
「ええ?本当に?」
「うん。だって今も私の話を真剣に聞いてくれてるもの。自信持って。沙穂さんは今のままで充分魅力的だから」
「まさかそんな……。私なんて何の取り柄もないのに」
「ううん、素敵だなって思ってる男性はいるよ。私、根拠があって言ってるから。ふふっ」
その時、ピンポンとチャイムが鳴り、はーい!と芹奈は立ち上がる。
ドアを開けると、ホテルのスタッフがにこやかに紙袋を差し出した。
「お待たせいたしました。ワンピースを3着見繕ってまいりました。もしお気に召さないようでしたら、追加でお持ちしますので」
「ありがとうございます」
受け取ると、芹奈は沙穂のいるベッドにワンピースを並べる。
「沙穂さん、好きなものを選んでね」
「ええ!?私の為に用意してくださったのですか?すみません、ご迷惑をおかけして」
「だから、迷惑なんかじゃないの!ほら、どれがいい?沙穂さんが選んで」
「えっと、じゃあ……。この薄いピンク色のにします」
「うん!沙穂さんに似合うと思う」
そう言って芹奈は沙穂に優しく笑いかけた。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
半身を起こす沙穂を手伝い、二人で紅茶を飲む。
「あの、里見さん」
「なあに?」
「私、お見合いなんて初めてなんです。どうしたらいいでしょう?」
え、それは、と芹奈は言葉に詰まる。
「私からは何も……。沙穂さんの気持ち次第じゃないかしら?」
「そうですよね。すみません、変なことを聞いてしまって……。私、お仕事も出来ないし、このまま父の勧める縁談を受け入れるしかないと思っています。だけどこんな私と一緒になるなんて、お相手の方に申し訳なくて」
今日初めて会ってから、沙穂はずっと自信なさげにうつむいている。
そう思い、芹奈は言葉を選んだ。
「沙穂さんが、この人と結婚したいと思ったらそう伝えればいいと思う。でも相手に気を遣ったり、自分の気持ちに嘘をつく必要はないんじゃないかな?お父上だって、沙穂さんの幸せを何より願っていらっしゃると思うの。沙穂さんが自分で幸せになれる道を選んだらいいのよ」
「私が、選ぶ?」
「そうよ。それに、自分はお仕事も出来ないなんて決めつけないで。やりたいと思ったらやってみたら?」
「でも私なんかが働いたら、失敗ばかりで何の役にも立たないと思います。周りの方にご迷惑になるだけです」
芹奈は、うーん、としばし宙に目をやる。
「沙穂さんから見たら私はちゃんと働いてるように見えるかもしれないけど、私だって日々失敗だらけなのよ?」
「そうなんですか?」
「もちろん。特に新人の頃なんて、先輩に何度教わっても覚えられなくてご迷惑ばかりかけてた。そんな私も入社6年目になって、今は新入社員の後輩にこう言ってるの。最初は会社に来るだけでえらいわよって。まず1つ目の目標は、社内で迷子にならないことって」
すると沙穂は、キョトンとしてから笑い出す。
「迷子にならないこと、ですか?」
「そう。だって私、新人の頃に社内で迷子になって、社食から秘書室に帰れなくなったんだもん」
「えー、すごいですね。ふふふ」
「すごいでしょ?」
だからね、と芹奈は沙穂に笑いかける。
「最初は何も出来なくて当たり前。完璧なんて目指さなくていいの。人に迷惑だって、かけてもいいの。その分、いつか誰かに優しく出来たら。そうやって支え合う職場が必ず見つかるから。小さな1歩から始めればいい。だめだって思ったら、また別の道を探せばいいの。大丈夫。沙穂さんなら、適当に肩の力抜いてちょうどいいくらいよ」
「ええ?本当に?」
「うん。だって今も私の話を真剣に聞いてくれてるもの。自信持って。沙穂さんは今のままで充分魅力的だから」
「まさかそんな……。私なんて何の取り柄もないのに」
「ううん、素敵だなって思ってる男性はいるよ。私、根拠があって言ってるから。ふふっ」
その時、ピンポンとチャイムが鳴り、はーい!と芹奈は立ち上がる。
ドアを開けると、ホテルのスタッフがにこやかに紙袋を差し出した。
「お待たせいたしました。ワンピースを3着見繕ってまいりました。もしお気に召さないようでしたら、追加でお持ちしますので」
「ありがとうございます」
受け取ると、芹奈は沙穂のいるベッドにワンピースを並べる。
「沙穂さん、好きなものを選んでね」
「ええ!?私の為に用意してくださったのですか?すみません、ご迷惑をおかけして」
「だから、迷惑なんかじゃないの!ほら、どれがいい?沙穂さんが選んで」
「えっと、じゃあ……。この薄いピンク色のにします」
「うん!沙穂さんに似合うと思う」
そう言って芹奈は沙穂に優しく笑いかけた。



