「ねえ。沙穂さんって、生粋のお嬢様って感じよね?男の人と二人きりになったのなんて初めて!って感じがヒシヒシと伝わってくるもん」

ロビーラウンジの端の席に村尾と座り、芹奈は紅茶を飲みながら奥のテーブルに目をやる。

視線の先には、いかにもお見合い中、という雰囲気で、翔と沙穂が向かい合って座っていた。

見つからないように気をつけつつ、芹奈はチラチラと二人を盗み見る。

「今どき珍しいくらいにピュアな雰囲気だよね。男の人って、やっぱりああいうお嬢様が好き?」
「んー、人によるだろうな。か弱い彼女は俺が守ってやらなきゃ、みたいに思う男はいると思う」
「村尾くんは違うの?」
「俺?どストライク」

ええっ!?と芹奈は思わず声を上げた。

「しーっ。芹奈、気づかれるぞ」
「ごめん、だってびっくりして。そうなんだ、村尾くんって……」

そこまで言った時だった。
いきなり翔が立ち上がり、スタスタとこちらに向かって歩いて来る。

ヤバイ!と芹奈は慌てて顔を伏せた。

「里見さん」
「は、はいー?人違いじゃないかしら。ねえ、お父さん」
「バレてるから、変なお芝居やめて。沙穂さんの具合が良くないみたいなんだ」

えっ!と芹奈は顔を上げて翔を見る。

「沙穂さんが?」
「ああ。はっきり言わないけど、どうも様子がおかしい。見てやってくれる?」
「かしこまりました」

芹奈はすぐさま立ち上がって頷いた。