「こちらのお部屋です。どうぞ」
客室の前まで来ると、芹奈はカードキーをかざしてからドアを開ける。
村尾が手配してくれた部屋はセミスイートで、リビングとベッドルームが別になっていた。
(良かった。ここなら落ち着いて仕事の話が出来そう)
芹奈は少し安心して、胸をなでおろす。
先方の秘書がいない以上、自分も席を外すのが筋かと思い「それでは、私もここで」とドアの横で頭を下げる。
すると翔が振り返った。
「里見さん、コーヒー淹れてくれる?」
「あ、はい。かしこまりました」
失礼いたします、と言って部屋に入り、ケトルのスイッチを押してお湯を沸かす。
沸騰するのを待つ間、チラリと様子をうかがうと、石津は大げさなほど「素敵なお部屋ねえ」とうっとりしていた。
コーヒーを二人分淹れると、芹奈はソファに向かい合っている翔と石津の前にカップを置いてから立ち上がる。
今度こそ、私はこれで、と挨拶しようとすると、またしても翔が口を開いた。
「里見さん、資料を出してくれる?」
「かしこまりました」
芹奈が書類ケースから先程の資料を取り出していると、翔のスマートフォンに海外支社から電話が入った。
「石津社長、申し訳ありません。急ぎの要件で、少し電話に出てもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「失礼いたします」
翔は頭を下げると、隣の部屋へと姿を消した。
客室の前まで来ると、芹奈はカードキーをかざしてからドアを開ける。
村尾が手配してくれた部屋はセミスイートで、リビングとベッドルームが別になっていた。
(良かった。ここなら落ち着いて仕事の話が出来そう)
芹奈は少し安心して、胸をなでおろす。
先方の秘書がいない以上、自分も席を外すのが筋かと思い「それでは、私もここで」とドアの横で頭を下げる。
すると翔が振り返った。
「里見さん、コーヒー淹れてくれる?」
「あ、はい。かしこまりました」
失礼いたします、と言って部屋に入り、ケトルのスイッチを押してお湯を沸かす。
沸騰するのを待つ間、チラリと様子をうかがうと、石津は大げさなほど「素敵なお部屋ねえ」とうっとりしていた。
コーヒーを二人分淹れると、芹奈はソファに向かい合っている翔と石津の前にカップを置いてから立ち上がる。
今度こそ、私はこれで、と挨拶しようとすると、またしても翔が口を開いた。
「里見さん、資料を出してくれる?」
「かしこまりました」
芹奈が書類ケースから先程の資料を取り出していると、翔のスマートフォンに海外支社から電話が入った。
「石津社長、申し訳ありません。急ぎの要件で、少し電話に出てもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「失礼いたします」
翔は頭を下げると、隣の部屋へと姿を消した。



