シャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かしてから服を着て部屋を出る。
すると翔がホテルのロゴ入りの紙袋を渡してきた。
「よかったらどうぞ。君の着替えに」
「え?お洋服、ですか?」
「そう。俺の着替えのついでに頼んだんだ。スタッフにお任せにしたから、趣味が合うといいんだけど」
そう言えばさっきはバスローブ姿だった翔が、今はラフなカットソーとチノパンに着替えている。
「そんな、私の分まで?」
「ああ。試しに着替えてみてくれないかな?」
「あ、はい」
紙袋を受け取ると、芹奈はもう一度バスルームに戻って着替えた。
入っていたのはベージュのパフスリーブワンピース。
ウエストは高い位置にベルトがあり、そこからふんわりと広がるスカートのシルエットは何ともエレガントな雰囲気だった。
「ええー?こんなワンピース着たことないよ」
自分では絶対に選ばないようなお嬢様っぽいワンピースで、鏡の中の自分が別人のように見える。
「うーん……。どうしよう、うーん」
どうもこうも、悩んだところでどうしようもない。
芹奈は髪をハーフアップで結ぶと、意を決してリビングに戻った。
「お、着替えられた?サイズは……」
そう言って顔を上げた翔が、目を見開いて固まる。
「あの、副社長?」
芹奈が恐る恐る声をかけると、翔はハッと我に返った。
「ごめん。思わず驚いてしまって……」
「やっぱり、似合いませんよね?」
「い、いや!すごく似合ってる。というか、可愛すぎてびっくりした」
「またそんな。副社長、ダグラスさんみたいですよ?欧米人のリップサービス」
「あいつと一緒にしないでくれ。ほら、朝食も届いたし、どうぞ座って」
「はい、失礼します」
翔が引いてくれた椅子に、芹奈はゆっくりと腰掛ける。
テーブルにはオムレツにクロワッサンにスープ、フレッシュジュースやフルーツ、ヨーグルトとサラダも並んでいた。
「わあ、朝から豪華ですね」
「どうぞ、召し上がれ」
「はい、いただきます」
カーテンを開けた室内に朝の眩しい陽射しが射し込み、芹奈は優雅な気分で美味しい朝食を味わう。
「副社長って、確か普段は朝食を召し上がらないんでしたっけ?」
「ああ、コーヒーだけだな」
「それは心配です。少しでも何か召し上がった方がいいですよ」
「うん、けどさ。男のひとり暮らしなんてそんなもんじゃない?」
「そうなんですか?それなら早くご結婚なさってはどうでしょう。そう言えば副社長が帰国されてから、社長は色んな取引先の方に縁談を持ちかけられてるんです。副社長と結婚したいご令嬢がたくさんいらっしゃるみたいで」
すると翔は手を止めて、傍目にも分かりやすくしょんぼりとした。
「え、ごめんなさい!私ったら余計な事を。そうですよね、副社長は心に決めた大切な恋人とご結婚されるんですよね。失礼しました」
芹奈は慌てて謝ると、何やら考え込む。
「そういうことなら、私も協力いたします。実は社長から、副社長の仕事が落ち着いた頃に、ご令嬢との食事の場を設けたいと言われていたんです」
今度は翔が、えっ!と慌てた。
「そ、そんな話が?」
「はい。副社長、お父上である社長に、恋人のお話はされていないんですか?社長はどうやら、副社長がずっと独り身なのを気にされて、縁談を進めようとなさっています」
「知らなかった。それは困る」
「ですよね。私からそれとなく、縁談は先延ばしにするようにしておきましょうか?」
「ああ、頼む」
「かしこまりました。ですけど、そう長くは引っ張れないと思います。副社長も恋人とのご結婚、この機会に現実的にお考えに……って、ええ?どうかしましたか?」
翔は眉を八の字に下げて、すがるように芹奈を見つめてきた。
「ふ、副社長?もしや、お相手の女性とあまりうまくいってらっしゃらないのですか?」
「違う、そうじゃないんだ。実は俺、大好きなんだ」
君のことが……と続けようとした翔の言葉は、「ひゃー!」という芹奈の声にかき消された。
「ちょっと、すごいですね。さすがは欧米流。どストレート!彼女さん、嬉しいでしょうね。そんなに副社長に愛されて。あー、びっくりした。ふふっ」
照れたように可愛らしく笑うと、芹奈はまた食事に戻る。
弁明しようと口を開いた翔は思わず芹奈の笑顔に見とれ、結局何も言えずにフォークを握り直した。
すると翔がホテルのロゴ入りの紙袋を渡してきた。
「よかったらどうぞ。君の着替えに」
「え?お洋服、ですか?」
「そう。俺の着替えのついでに頼んだんだ。スタッフにお任せにしたから、趣味が合うといいんだけど」
そう言えばさっきはバスローブ姿だった翔が、今はラフなカットソーとチノパンに着替えている。
「そんな、私の分まで?」
「ああ。試しに着替えてみてくれないかな?」
「あ、はい」
紙袋を受け取ると、芹奈はもう一度バスルームに戻って着替えた。
入っていたのはベージュのパフスリーブワンピース。
ウエストは高い位置にベルトがあり、そこからふんわりと広がるスカートのシルエットは何ともエレガントな雰囲気だった。
「ええー?こんなワンピース着たことないよ」
自分では絶対に選ばないようなお嬢様っぽいワンピースで、鏡の中の自分が別人のように見える。
「うーん……。どうしよう、うーん」
どうもこうも、悩んだところでどうしようもない。
芹奈は髪をハーフアップで結ぶと、意を決してリビングに戻った。
「お、着替えられた?サイズは……」
そう言って顔を上げた翔が、目を見開いて固まる。
「あの、副社長?」
芹奈が恐る恐る声をかけると、翔はハッと我に返った。
「ごめん。思わず驚いてしまって……」
「やっぱり、似合いませんよね?」
「い、いや!すごく似合ってる。というか、可愛すぎてびっくりした」
「またそんな。副社長、ダグラスさんみたいですよ?欧米人のリップサービス」
「あいつと一緒にしないでくれ。ほら、朝食も届いたし、どうぞ座って」
「はい、失礼します」
翔が引いてくれた椅子に、芹奈はゆっくりと腰掛ける。
テーブルにはオムレツにクロワッサンにスープ、フレッシュジュースやフルーツ、ヨーグルトとサラダも並んでいた。
「わあ、朝から豪華ですね」
「どうぞ、召し上がれ」
「はい、いただきます」
カーテンを開けた室内に朝の眩しい陽射しが射し込み、芹奈は優雅な気分で美味しい朝食を味わう。
「副社長って、確か普段は朝食を召し上がらないんでしたっけ?」
「ああ、コーヒーだけだな」
「それは心配です。少しでも何か召し上がった方がいいですよ」
「うん、けどさ。男のひとり暮らしなんてそんなもんじゃない?」
「そうなんですか?それなら早くご結婚なさってはどうでしょう。そう言えば副社長が帰国されてから、社長は色んな取引先の方に縁談を持ちかけられてるんです。副社長と結婚したいご令嬢がたくさんいらっしゃるみたいで」
すると翔は手を止めて、傍目にも分かりやすくしょんぼりとした。
「え、ごめんなさい!私ったら余計な事を。そうですよね、副社長は心に決めた大切な恋人とご結婚されるんですよね。失礼しました」
芹奈は慌てて謝ると、何やら考え込む。
「そういうことなら、私も協力いたします。実は社長から、副社長の仕事が落ち着いた頃に、ご令嬢との食事の場を設けたいと言われていたんです」
今度は翔が、えっ!と慌てた。
「そ、そんな話が?」
「はい。副社長、お父上である社長に、恋人のお話はされていないんですか?社長はどうやら、副社長がずっと独り身なのを気にされて、縁談を進めようとなさっています」
「知らなかった。それは困る」
「ですよね。私からそれとなく、縁談は先延ばしにするようにしておきましょうか?」
「ああ、頼む」
「かしこまりました。ですけど、そう長くは引っ張れないと思います。副社長も恋人とのご結婚、この機会に現実的にお考えに……って、ええ?どうかしましたか?」
翔は眉を八の字に下げて、すがるように芹奈を見つめてきた。
「ふ、副社長?もしや、お相手の女性とあまりうまくいってらっしゃらないのですか?」
「違う、そうじゃないんだ。実は俺、大好きなんだ」
君のことが……と続けようとした翔の言葉は、「ひゃー!」という芹奈の声にかき消された。
「ちょっと、すごいですね。さすがは欧米流。どストレート!彼女さん、嬉しいでしょうね。そんなに副社長に愛されて。あー、びっくりした。ふふっ」
照れたように可愛らしく笑うと、芹奈はまた食事に戻る。
弁明しようと口を開いた翔は思わず芹奈の笑顔に見とれ、結局何も言えずにフォークを握り直した。



