「おはよう」

翌朝、ぼんやりと目を開けた芹奈に翔が笑いかける。
すぐ目の前に迫る整った顔立ちに、一気に眠気が吹き飛んだ芹奈は、目を見開いて後ずさった。

「おっと!今日はミーアキャットはお預けだよ。足はどう?」

芹奈の身体をグッと抱き寄せて掛け布団をめくった翔は、次の瞬間ピッキーン!と固まった。
ん?と視線を下げた芹奈もカッチーン!と固まる。

バスローブの胸元がはだけ、胸の谷間が見えていた。
それだけでなく、裾も乱れて太ももまで露わになっている。

「ひゃっ、ちょっと、あの!」

芹奈は急いでバスローブを整え、ガバッと布団の中に潜り込んだ。

(ううう、もう終わりだ。副社長とは顔も合わせられない)

うぐっと唇を噛みしめていると、ポスポスと布団がノックされた。

「ごめんね、悪かった。顔を見せてくれる?」
「無理です!副社長には二度と合わせる顔がありません」
「そんなこと言わないで」
「ずっと布団をかぶって生きていきます」
「それも可愛いけど、でもやっぱり顔も見たいな」
「無理なものは無理です。もう恥ずかしくて……」

泣きそうな芹奈の声に、翔は苦笑いを浮かべる。

(こんなにも恥じらうとは。やっぱり日本の女性って可愛らしいな)

けれどそう言う翔も、少し素肌が見えただけの芹奈に大げさなほどドキリとさせられていた。

昨晩も芹奈に寄り添ってぐっすり眠り、気持ち良く目覚めると、無防備な芹奈の寝顔がすぐ目の前にあってキュンとした。
優しく髪をなでて可愛い寝顔を堪能したあとに、思いがけず乱れた色っぽい姿を目の当たりにし、カッと身体中が熱くなった。

芹奈が布団に隠れてくれて良かった。
でなければ、理性が吹き飛んで何をしでかしていたか分からない。

ようやく冷静になって声をかけても、芹奈は恥ずかしがって顔も見せてくれない。

(ほんとに可愛いなあ。抱きしめてめちゃめちゃにしたくなる。俺、どれだけゾッコンなんだか)

やれやれと自分に呆れると、もう一度芹奈に声をかけた。

「せめて足の具合を確認させて。夜中に痛んだりしなかった?」
「大丈夫です」

モゴモゴとくぐもった声で芹奈が返事をする。

「じゃあ、足だけ見せて」

するとモゾモゾと布団が動き、ぴょこんと右足が飛び出てきた。

(ふっ、かーわいい)

思わずにやけながら、翔はそっと芹奈の足に触れる。

「うん、赤みも引いてるし腫れもないね。動かしても痛くない?」

そう尋ねると、芹奈は返事の代わりに右足をぺこりと動かした。

「ははは!可愛くてたまんない」

翔は堪え切れずに笑い出し、芹奈の足の甲にチュッと口づけた。

「ちょ、ちょっと!副社長!?」

芹奈がガバッと起き上がる。

「今、何を?」
「おっ、やっと顔見せてくれたね、ミーアキャットちゃん」
「今日はミーアキャットやってません!」
「そうだった。じゃあ、また今度。楽しみにしてるね」

にっこり笑う翔に、芹奈はもう返す言葉もなく真っ赤になっていた。