「アウトレット視察は明日にして、今日はこのままホテルの視察でもいいかな?」
軽井沢に着くと、翔が村尾と芹奈に尋ねた。
「はい、大丈夫です。せっかくですから、ホテルもじっくり見て回りたいですし」
村尾はホテルに向かうと、ロータリーに車を止める。
するとすぐさまドアマンが後部座席のドアを開けて、翔に深々と頭を下げた。
「副社長、ようこそお越しくださいました」
ロビーから他のスタッフ達もやって来て、一斉に翔にお辞儀をする。
村尾がトランクから荷物を下ろすとすかさず運んでくれ、車も駐車場に停めに行ってくれた。
支配人が翔に挨拶をして、直々にスイートルームへと案内する。
「副社長、こちらのお部屋でいかがでしょうか?」
「え?こんなに広い部屋でなくても構わないのに」
「いえ、とんでもない。どうぞお使いください」
「それなら、秘書の部屋を減らしてくれていい。村尾。ベッドルームが二つあるから、ここでもいいだろ?」
もちろんですと村尾が頷くと、翔は支配人にシングルルームをひと部屋キャンセルするように伝えた。
「承知いたしました。夕食は7時にフレンチレストランでご用意しておりますが、よろしいでしょうか?」
「ああ、それでいい。ありがとう」
「それでは、何かありましたらいつでもお知らせくださいませ。どうぞごゆっくり」
丁寧なお辞儀をしてから支配人が部屋を出て行く。
「副社長、今コーヒーを淹れますね。村尾くんも座ってて」
芹奈はすぐさまポットでお湯を沸かしてコーヒーを淹れた。
ソファに運んで三人でひと息つくと、芹奈は改めて部屋を見渡す。
「とっても素敵ですね。家具も落ち着いた色合いで、窓も大きいから外の景色がよく見えます」
そう言ってから、控えめに翔に尋ねた。
「あの、副社長。ちょっと探検して来てもいいですか?あのドアを開けたらどんなお部屋があるのかなって、うずうずしちゃって……」
「ははっ!子どもみたいだな。どうぞ、お好きなだけ探検してきて」
「はい。では失礼して、行って来ます」
芹奈はすっくと立ち上がり、ワクワクしながら部屋の奥にあるドアへと向かう。
そっと開けて顔を覗かせると、広々とした寝室の中央にキングサイズのゴージャスなベッドがあった。
ソファやデスク、窓際にはバーカウンターもある。
「わあ、素敵!こんなお部屋で夜を過ごせたらいいな。副社長、バスルームもいいですか?」
目を輝かせて振り返る芹奈に、「ああ、もちろん」と言いながら翔は顔を赤らめる。
(部屋で、夜を、過ごす……。バスルームも、いいですか?)
頭の中に芹奈の言葉が蘇り、ほわーんと妙なイメージが浮かんできた。
すると隣で村尾が小さく呟く。
「副社長。今夜は俺がシングルの客室で寝ますから、副社長はどうぞここで芹奈とごゆっくり」
「ば、ば、ば、バカ!な、何を言ってんだ?」
「そんなに取り乱さなくても……。芹奈は部屋のリサーチしたいでしょうし、俺は運転で疲れたから早く一人で寝たいだけですよ?」
「あ、そういうことか。うん、そりゃそうだよな」
「まあ、男女がひと晩一緒にいれば、どうなるかは明らかですけどね」
「ば、ば、ば、バカ!な、何を言ってんだ?」
その時「広ーい!なんて素敵なお風呂!」と芹奈の声が聞こえてきて、翔はタコのように真っ赤になる。
やれやれと村尾は肩をすくめた。
「副社長、海外ではその場の雰囲気でどうにでもしちゃってたんじゃないんですか?」
「そ、そんなこと、里見さんにする訳ないだろ!?」
「どうしてですか?」
「だって、それは……。俺、本気で惚れちゃったし」
「惚れちゃったんなら、もういいじゃないですか。いっちゃってくださいよ」
翔が3度目の「ば、ば、ば、バカ!」を言い始めた時、芹奈が戻って来た。
「アメニティもすごく可愛かったですよ。バラの形のバスボムがあって、中からバラの花びらが出てくるんですって!それにバラの香りのバスソルトもありました。しかも!バスタブは猫足なんですよ?憧れちゃうなあ」
芹奈は頬に手を当ててうっとりとする。
「でもきっと、スイートルームの特別なアメニティですよね」
ちょっと残念そうに呟く芹奈を見て、村尾は翔に目配せした。
「な、なんだよ?」
翔は小声でふてくされる。
「ほら、今ですよ」
「何が?」
「だから、ここのバスルーム使いなよって、芹奈に」
「言える訳ないだろ!?」
「どうしてですか?言っちゃいましょう!」
「里見さんには、そんな……」
すると芹奈がいきなり、あっ!と声を上げた。
「大変!もう7時ですよ。レストランに行かなきゃ」
「そ、そうだな」
取り繕うように立ち上がる翔に、村尾は大きなため息をついた。
軽井沢に着くと、翔が村尾と芹奈に尋ねた。
「はい、大丈夫です。せっかくですから、ホテルもじっくり見て回りたいですし」
村尾はホテルに向かうと、ロータリーに車を止める。
するとすぐさまドアマンが後部座席のドアを開けて、翔に深々と頭を下げた。
「副社長、ようこそお越しくださいました」
ロビーから他のスタッフ達もやって来て、一斉に翔にお辞儀をする。
村尾がトランクから荷物を下ろすとすかさず運んでくれ、車も駐車場に停めに行ってくれた。
支配人が翔に挨拶をして、直々にスイートルームへと案内する。
「副社長、こちらのお部屋でいかがでしょうか?」
「え?こんなに広い部屋でなくても構わないのに」
「いえ、とんでもない。どうぞお使いください」
「それなら、秘書の部屋を減らしてくれていい。村尾。ベッドルームが二つあるから、ここでもいいだろ?」
もちろんですと村尾が頷くと、翔は支配人にシングルルームをひと部屋キャンセルするように伝えた。
「承知いたしました。夕食は7時にフレンチレストランでご用意しておりますが、よろしいでしょうか?」
「ああ、それでいい。ありがとう」
「それでは、何かありましたらいつでもお知らせくださいませ。どうぞごゆっくり」
丁寧なお辞儀をしてから支配人が部屋を出て行く。
「副社長、今コーヒーを淹れますね。村尾くんも座ってて」
芹奈はすぐさまポットでお湯を沸かしてコーヒーを淹れた。
ソファに運んで三人でひと息つくと、芹奈は改めて部屋を見渡す。
「とっても素敵ですね。家具も落ち着いた色合いで、窓も大きいから外の景色がよく見えます」
そう言ってから、控えめに翔に尋ねた。
「あの、副社長。ちょっと探検して来てもいいですか?あのドアを開けたらどんなお部屋があるのかなって、うずうずしちゃって……」
「ははっ!子どもみたいだな。どうぞ、お好きなだけ探検してきて」
「はい。では失礼して、行って来ます」
芹奈はすっくと立ち上がり、ワクワクしながら部屋の奥にあるドアへと向かう。
そっと開けて顔を覗かせると、広々とした寝室の中央にキングサイズのゴージャスなベッドがあった。
ソファやデスク、窓際にはバーカウンターもある。
「わあ、素敵!こんなお部屋で夜を過ごせたらいいな。副社長、バスルームもいいですか?」
目を輝かせて振り返る芹奈に、「ああ、もちろん」と言いながら翔は顔を赤らめる。
(部屋で、夜を、過ごす……。バスルームも、いいですか?)
頭の中に芹奈の言葉が蘇り、ほわーんと妙なイメージが浮かんできた。
すると隣で村尾が小さく呟く。
「副社長。今夜は俺がシングルの客室で寝ますから、副社長はどうぞここで芹奈とごゆっくり」
「ば、ば、ば、バカ!な、何を言ってんだ?」
「そんなに取り乱さなくても……。芹奈は部屋のリサーチしたいでしょうし、俺は運転で疲れたから早く一人で寝たいだけですよ?」
「あ、そういうことか。うん、そりゃそうだよな」
「まあ、男女がひと晩一緒にいれば、どうなるかは明らかですけどね」
「ば、ば、ば、バカ!な、何を言ってんだ?」
その時「広ーい!なんて素敵なお風呂!」と芹奈の声が聞こえてきて、翔はタコのように真っ赤になる。
やれやれと村尾は肩をすくめた。
「副社長、海外ではその場の雰囲気でどうにでもしちゃってたんじゃないんですか?」
「そ、そんなこと、里見さんにする訳ないだろ!?」
「どうしてですか?」
「だって、それは……。俺、本気で惚れちゃったし」
「惚れちゃったんなら、もういいじゃないですか。いっちゃってくださいよ」
翔が3度目の「ば、ば、ば、バカ!」を言い始めた時、芹奈が戻って来た。
「アメニティもすごく可愛かったですよ。バラの形のバスボムがあって、中からバラの花びらが出てくるんですって!それにバラの香りのバスソルトもありました。しかも!バスタブは猫足なんですよ?憧れちゃうなあ」
芹奈は頬に手を当ててうっとりとする。
「でもきっと、スイートルームの特別なアメニティですよね」
ちょっと残念そうに呟く芹奈を見て、村尾は翔に目配せした。
「な、なんだよ?」
翔は小声でふてくされる。
「ほら、今ですよ」
「何が?」
「だから、ここのバスルーム使いなよって、芹奈に」
「言える訳ないだろ!?」
「どうしてですか?言っちゃいましょう!」
「里見さんには、そんな……」
すると芹奈がいきなり、あっ!と声を上げた。
「大変!もう7時ですよ。レストランに行かなきゃ」
「そ、そうだな」
取り繕うように立ち上がる翔に、村尾は大きなため息をついた。



