「俺、軽井沢なんて何年ぶりか分からん」
車内で翔がポツリと切り出す。
「そうですよね。ずっと海外にいらしたんですものね」
「ああ。軽井沢の神蔵のホテルも、子どもの頃オープンしてすぐに行った切りなんだ。楽しみだな」
軽く頬杖をつきながら窓の外を見ている翔に、芹奈が聞いてみた。
「副社長。海外にいらした時、どの国が一番良かったですか?」
「ん?そうだな。どこもそれぞれ良さがあるけど……。一番楽しめたのはアメリカ西海岸かな」
「ロサンゼルス支社ですか?」
「そう。あっちは車社会だから、どこまででも車で行けるんだ。フリーウェイは名前の通り無料だしな。仕事終わりにふと思いついて、ロスから夜通し車を走らせてラズベガスまで行ったこともあるよ」
ええ!?と芹奈は驚く。
「そうだ、京都へ行こう!の比じゃないですね」
「ははは!そうだな。俺も若かったしね。真っ暗な中を何時間も走って、地平線の向こうにラスベガスのネオンが少しずつ見えてきた時はワクワクしたな。途中にそれこそアウトレットもあるんだけど、広過ぎて次のお店に行くのに車で移動したり」
「そうなんですね?スケールが違います」
「ま、自分の足で歩く機会がなくて、身体には良くないけど」
「ふふ、確かに。でもなんだか別世界だな。それなら日本は狭く感じますよね?きっと」
そうだな、と翔は感慨深げに頷く。
「価値観が変わったかもな。世界はこんなに広くて、色んな人がいるんだって。ラスベガスだけじゃなく、サンフランシスコにも車でふらっと行けたり、メキシコとの国境も車で超えたりね。グランドキャニオンに行った時は、あまりの自然の壮大さに言葉もなかった」
翔の言葉に芹奈はじっと聞き入る。
「素敵ですね。私もいつか行ってみたいです。日々の悩みごととか、人生観とか、ガラッと変わりそう」
「行ってみるといいよ。きっと人生が豊かになる」
「はい!」
微笑み合う芹奈と翔をバックミラー越しに見た村尾は、思わずふっと笑みをこぼす。
(やれやれ、良かった。副社長、この視察出張中に芹奈に告白してくれないかな?よし、出来るだけ二人きりにさせよう)
もはや視察とは別の使命感に燃える村尾だった。
車内で翔がポツリと切り出す。
「そうですよね。ずっと海外にいらしたんですものね」
「ああ。軽井沢の神蔵のホテルも、子どもの頃オープンしてすぐに行った切りなんだ。楽しみだな」
軽く頬杖をつきながら窓の外を見ている翔に、芹奈が聞いてみた。
「副社長。海外にいらした時、どの国が一番良かったですか?」
「ん?そうだな。どこもそれぞれ良さがあるけど……。一番楽しめたのはアメリカ西海岸かな」
「ロサンゼルス支社ですか?」
「そう。あっちは車社会だから、どこまででも車で行けるんだ。フリーウェイは名前の通り無料だしな。仕事終わりにふと思いついて、ロスから夜通し車を走らせてラズベガスまで行ったこともあるよ」
ええ!?と芹奈は驚く。
「そうだ、京都へ行こう!の比じゃないですね」
「ははは!そうだな。俺も若かったしね。真っ暗な中を何時間も走って、地平線の向こうにラスベガスのネオンが少しずつ見えてきた時はワクワクしたな。途中にそれこそアウトレットもあるんだけど、広過ぎて次のお店に行くのに車で移動したり」
「そうなんですね?スケールが違います」
「ま、自分の足で歩く機会がなくて、身体には良くないけど」
「ふふ、確かに。でもなんだか別世界だな。それなら日本は狭く感じますよね?きっと」
そうだな、と翔は感慨深げに頷く。
「価値観が変わったかもな。世界はこんなに広くて、色んな人がいるんだって。ラスベガスだけじゃなく、サンフランシスコにも車でふらっと行けたり、メキシコとの国境も車で超えたりね。グランドキャニオンに行った時は、あまりの自然の壮大さに言葉もなかった」
翔の言葉に芹奈はじっと聞き入る。
「素敵ですね。私もいつか行ってみたいです。日々の悩みごととか、人生観とか、ガラッと変わりそう」
「行ってみるといいよ。きっと人生が豊かになる」
「はい!」
微笑み合う芹奈と翔をバックミラー越しに見た村尾は、思わずふっと笑みをこぼす。
(やれやれ、良かった。副社長、この視察出張中に芹奈に告白してくれないかな?よし、出来るだけ二人きりにさせよう)
もはや視察とは別の使命感に燃える村尾だった。



