翌朝。
芹奈は早めに出社して、昨日の視察のレポートを作成していた。
カタカタとキーボートに指を走らせつつ、チラリと時計に目をやる。
そろそろ他のメンバーも出社してくる時間だった。
(どうか最初に来るのが井口くんじゃありませんように)
昨日の今日でまた二人きりになり、あの雰囲気を醸し出されてはどうしていいのか分からない。
(弟みたいだった井口くんに、こんなにも心をかき乱されるとは……。ズバッと、あなたのことは嫌いって断った方が良かったかな?でもあの時は、そんなこと言ったら泣かれちゃうんじゃないかって思ってたから。まさかこんなにもグイグイくる性格だったとは)
そんなことを考えていると、「おはよう、芹奈」と村尾が現れた。
「村尾くん!おはよう!良かったー、村尾くんが来てくれて」
「なんだ?熱烈歓迎だな、気味が悪い」
「ねえねえねえ、私これからずーっと村尾くんのあとつけてもいい?ずっと一緒に行動したいの」
「やめろ、うざい。ってか、なんでまた急にそんなこと言い出すんだ?」
その時「おはようございます」と井口が部屋に入って来た。
「おはよう、井口。早いな」
「はい。里見さんに、昨日の社長秘書業務の申し送りをしたくて」
「そうか、じゃあごゆっくり。俺は副社長にスケジュール伝えて来るよ」
そう言って出て行く村尾の背中に、行かないで―!と芹奈は心の中で懇願する。
「では里見さん、早速始めてもいいですか?」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
あくまで仕事仕事、と気持ちを落ち着かせ、芹奈は井口のタブレットを一緒に覗き込んだ。
「昨日、日向設計の社長からお電話がありまして、社長とのミーティングを本日15時からセッティングいたしました。先方がこちらに来てくださるとのことで、場所は会議室5-1を押さえてあります。その後の社長のご予定もリスケしてありますので、ご確認ください」
「分かりました、ありがとう」
「それと社長は本日プライベートな所用の為、出社は1時間ほど遅くなるとのことです」
「そうなのね、承知しました」
申し送りを終えると、続々とメンバーも出社してくる。
「おはようございます!芹奈さん、今日は視察じゃないんですね」
「おはよう、菜緒ちゃん。うん、今日はずっと内勤だよ」
「じゃあ、ランチ一緒に行きましょ!たまには外で」
「いいね。いつものイタリアンにする?」
するといきなり井口が話に加わった。
「僕も一緒に行ってもいいですか?」
はいー?と芹奈は目を見開いて振り返る。
「えー、井口さん珍しいですね。もちろんいいですよ。爽やかアイドル大歓迎!ね、芹奈さん」
「さ、爽やか、アイドル?」
「私の同期の女子達、井口さんのことそう呼んでるんですよ。キラースマイルがキュンキュンしちゃうって」
両手を頬に当ててにっこりと菜緒が微笑むと、井口はまさにキラースマイルを浮かべた。
「ありがとう。でもお目当ての人には効果がないみたいなんだよね」
「え!?井口さん、それって恋バナ?やだ!今すぐ聞きたい!」
「あはは!じゃあ、ランチの時にね」
「はい!楽しみー。もうさっさと仕事片づけちゃいますね。早くランチになーれ!」
嬉しそうな菜緒の言葉を背に、芹奈はよろよろと給湯室に向かった。
芹奈は早めに出社して、昨日の視察のレポートを作成していた。
カタカタとキーボートに指を走らせつつ、チラリと時計に目をやる。
そろそろ他のメンバーも出社してくる時間だった。
(どうか最初に来るのが井口くんじゃありませんように)
昨日の今日でまた二人きりになり、あの雰囲気を醸し出されてはどうしていいのか分からない。
(弟みたいだった井口くんに、こんなにも心をかき乱されるとは……。ズバッと、あなたのことは嫌いって断った方が良かったかな?でもあの時は、そんなこと言ったら泣かれちゃうんじゃないかって思ってたから。まさかこんなにもグイグイくる性格だったとは)
そんなことを考えていると、「おはよう、芹奈」と村尾が現れた。
「村尾くん!おはよう!良かったー、村尾くんが来てくれて」
「なんだ?熱烈歓迎だな、気味が悪い」
「ねえねえねえ、私これからずーっと村尾くんのあとつけてもいい?ずっと一緒に行動したいの」
「やめろ、うざい。ってか、なんでまた急にそんなこと言い出すんだ?」
その時「おはようございます」と井口が部屋に入って来た。
「おはよう、井口。早いな」
「はい。里見さんに、昨日の社長秘書業務の申し送りをしたくて」
「そうか、じゃあごゆっくり。俺は副社長にスケジュール伝えて来るよ」
そう言って出て行く村尾の背中に、行かないで―!と芹奈は心の中で懇願する。
「では里見さん、早速始めてもいいですか?」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
あくまで仕事仕事、と気持ちを落ち着かせ、芹奈は井口のタブレットを一緒に覗き込んだ。
「昨日、日向設計の社長からお電話がありまして、社長とのミーティングを本日15時からセッティングいたしました。先方がこちらに来てくださるとのことで、場所は会議室5-1を押さえてあります。その後の社長のご予定もリスケしてありますので、ご確認ください」
「分かりました、ありがとう」
「それと社長は本日プライベートな所用の為、出社は1時間ほど遅くなるとのことです」
「そうなのね、承知しました」
申し送りを終えると、続々とメンバーも出社してくる。
「おはようございます!芹奈さん、今日は視察じゃないんですね」
「おはよう、菜緒ちゃん。うん、今日はずっと内勤だよ」
「じゃあ、ランチ一緒に行きましょ!たまには外で」
「いいね。いつものイタリアンにする?」
するといきなり井口が話に加わった。
「僕も一緒に行ってもいいですか?」
はいー?と芹奈は目を見開いて振り返る。
「えー、井口さん珍しいですね。もちろんいいですよ。爽やかアイドル大歓迎!ね、芹奈さん」
「さ、爽やか、アイドル?」
「私の同期の女子達、井口さんのことそう呼んでるんですよ。キラースマイルがキュンキュンしちゃうって」
両手を頬に当ててにっこりと菜緒が微笑むと、井口はまさにキラースマイルを浮かべた。
「ありがとう。でもお目当ての人には効果がないみたいなんだよね」
「え!?井口さん、それって恋バナ?やだ!今すぐ聞きたい!」
「あはは!じゃあ、ランチの時にね」
「はい!楽しみー。もうさっさと仕事片づけちゃいますね。早くランチになーれ!」
嬉しそうな菜緒の言葉を背に、芹奈はよろよろと給湯室に向かった。



