(どうしよう、なんなのこれ?)
二人きりのエレベーターの中で、芹奈はドキドキしながらうつむく。
もはや今までと同じように井口に接することが出来ない。
(井口くんにこんな男らしい一面があったなんて。弟みたいとしか思ってなかったのに。これから毎日、どんなふうに会話すればいいの?一緒に仕事とか、どうしよう)
悶々と考え込んでいると、またしても井口がふふっと笑った。
「告白のOKはもらえなかったけど、一歩前進かな?だって里見さん、少しは俺のこと意識してくれてるみたいだし」
「お、俺?井口くんが俺って言うの、初めて聞いた」
「もう弟キャラじゃないですから。里見さんの彼氏に相応しい男になって、惚れてもらえるようにがんばりますね」
「いや、そんな。がんばらなくても……」
「ほら、着きましたよ?降りましょう」
「はい、ありがとうございます」
エレベーターのドアを開けて促してくれる井口に礼を言い、二人でロビーを横切る。
「里見さん、照れてうつむいてるのがたまらなく可愛いです」
井口に耳元でささやかれ、芹奈はひえっ!とおののいた。
「あの、井口くん。ここは会社です。同僚としての振る舞いを忘れないで」
先輩風を吹かせて虚勢を張ってみる。
「分かってますよ。俺、里見さんに嫌われたくないし、仕事の面でも認めてもらいたいですから。みんなのいる前では普段と変わらず接します。でも今みたいに周りに誰もいなければ、ちょっと口説いちゃうかもしれません。ふふっ」
ふふって!と、芹奈は思わず恐ろしさに足を止めた。
(弟キャラのキャラ変?いや、反抗期?怖いよー、手に負えない)
すると井口も立ち止まって振り返る。
「里見さん?手を引いてあげましょうか?」
「けけ結構です」
スタスタと歩き出して井口を追い抜くと、またしてもクスッと笑われた。
「じゃあ、ここで。本当は里見さんのおうちまで送って行きたいけど、あんまりしつこいと嫌われそうなので」
駅のホームに着くと、井口は爽やかに笑って芹奈に手を振る。
「里見さん、気をつけて帰ってくださいね。また明日」
「は、はい。お疲れ様でした」
ぺこりとお辞儀をして電車に乗ると、ドアが閉まったあとも井口はにこにこと芹奈を見送った。
二人きりのエレベーターの中で、芹奈はドキドキしながらうつむく。
もはや今までと同じように井口に接することが出来ない。
(井口くんにこんな男らしい一面があったなんて。弟みたいとしか思ってなかったのに。これから毎日、どんなふうに会話すればいいの?一緒に仕事とか、どうしよう)
悶々と考え込んでいると、またしても井口がふふっと笑った。
「告白のOKはもらえなかったけど、一歩前進かな?だって里見さん、少しは俺のこと意識してくれてるみたいだし」
「お、俺?井口くんが俺って言うの、初めて聞いた」
「もう弟キャラじゃないですから。里見さんの彼氏に相応しい男になって、惚れてもらえるようにがんばりますね」
「いや、そんな。がんばらなくても……」
「ほら、着きましたよ?降りましょう」
「はい、ありがとうございます」
エレベーターのドアを開けて促してくれる井口に礼を言い、二人でロビーを横切る。
「里見さん、照れてうつむいてるのがたまらなく可愛いです」
井口に耳元でささやかれ、芹奈はひえっ!とおののいた。
「あの、井口くん。ここは会社です。同僚としての振る舞いを忘れないで」
先輩風を吹かせて虚勢を張ってみる。
「分かってますよ。俺、里見さんに嫌われたくないし、仕事の面でも認めてもらいたいですから。みんなのいる前では普段と変わらず接します。でも今みたいに周りに誰もいなければ、ちょっと口説いちゃうかもしれません。ふふっ」
ふふって!と、芹奈は思わず恐ろしさに足を止めた。
(弟キャラのキャラ変?いや、反抗期?怖いよー、手に負えない)
すると井口も立ち止まって振り返る。
「里見さん?手を引いてあげましょうか?」
「けけ結構です」
スタスタと歩き出して井口を追い抜くと、またしてもクスッと笑われた。
「じゃあ、ここで。本当は里見さんのおうちまで送って行きたいけど、あんまりしつこいと嫌われそうなので」
駅のホームに着くと、井口は爽やかに笑って芹奈に手を振る。
「里見さん、気をつけて帰ってくださいね。また明日」
「は、はい。お疲れ様でした」
ぺこりとお辞儀をして電車に乗ると、ドアが閉まったあとも井口はにこにこと芹奈を見送った。



