「で?あの井口ってどの井口くん?」
居酒屋に着き、ビールで乾杯した途端に切り出した翔に、村尾は思わずゴホッと咳き込んだ。
「ふ、副社長!?もしや、聞いて……」
「席に戻ったら聞こえてきたんだよ。あの井口が勇気出して告白したんだぞ?きちんと答えてやれってね。誰なんだ?あの井口くんとは」
「あー、その……。あの井口というのは、秘書室の井口です」
「うん。それで?」
「それで?えーっと、俺達より2つ年下です」
「うん。それから?」
「それから?えー、今、芹奈の代わりに社長秘書代理をしています」
「で?」
で、で?と、もはや村尾は言葉が続かない。
「えーっと、なんと申しましょうか。井口は、子犬みたいなキャラですかね?しっぽ振ってついて来そうな、可愛い弟分って感じです」
「その2つ年下で、可愛いしっぽフリフリの子犬みたいな井口くんが、里見さんに告白したと?その返事を今、まさにこの瞬間にも、里見さんは井口くんにしていると。つまりはそう言うことか?村尾」
「さ、左様で、ございます、副社長殿」
ダン!とビールジョッキをテーブルに置く翔に、村尾はビクッと身体を強張らせた。
「あ、あの、副社長?いかがなさいましたか?」
「村尾、俺、前にみなとみらいで話したよな?俺の知ってる欧米の女性はクールで淡々としてるが、里見さんは目をキラキラ輝かせて子どもみたいに感激してくれるって。俺はな、村尾。すっかりその日本女性の魅力に取りつかれたんだ」
「日本女性って……。副社長も日本人ですよね?」
「いや、違う」
「え?違うんですか?」
「日本女性だからではない!」
「あ、そっち」
「はっきり言おう。俺は里見さんに惚れている!」
ドドーン!と壮大な効果音が聞こえてきそうなほど、翔は胸を反らして断言する。
「そ、そうでしたか。それはそれは……」
「どうしてくれよう?村尾」
「え、どうにもこうにも……」
「今、まさに今!しっぽ振った子犬の井口くんが、里見さんの胸に飛び込んでいるのだとしたら?」
「あー、どうでしょうねえ?」
「お前はそれでも平気なのか!?」
「まあ、俺はそうですね……って、うぐっ、副社長!」
胸元を掴まれて、村尾は目を白黒させる。
「いけません。犯罪に手を染めては!秘書としてそんなことはさせられません!」
懸命に訴えると、ようやく翔は手を離した。
そしてグビグビとビールを煽る。
「どうしよう、今すぐ彼女を奪いに行きたい」
「ええー!?副社長、そんなに?いつの間にあいつのことをそこまで?」
「知らん。気づけば落ちているのが恋というものだろう?いや、湧き出でるこの気持ちは、もはや愛」
村尾は真顔に戻って身体を引き、キョロキョロと辺りを見回す。
誰かに聞かれるのが恥ずかしくて仕方なかった。
「村尾、教えてくれ。彼女はどうすれば俺に振り向いてくれるんだ?」
「ええ!?いやー、そんな。俺に聞かれても」
「彼女が言ってたんだ。アイラブユーとは言わない、シャイな人がいいって。けどダグラスが、好きな人に言われたら嬉しいに決まってるって言ったら、そうなのかな?って。どっちだ?アイラブユーって言ってもいいのか?だめなのか?」
「そ、それは。えーい!もう、言っちゃいましょう!」
「いいんだな?言っちゃうぞ?言ってもいいんだな?」
「いいともー!」
村尾はもはや、やけっぱちで叫ぶ。
やっかいなことになった、と心の中で頭を抱えながら……。
居酒屋に着き、ビールで乾杯した途端に切り出した翔に、村尾は思わずゴホッと咳き込んだ。
「ふ、副社長!?もしや、聞いて……」
「席に戻ったら聞こえてきたんだよ。あの井口が勇気出して告白したんだぞ?きちんと答えてやれってね。誰なんだ?あの井口くんとは」
「あー、その……。あの井口というのは、秘書室の井口です」
「うん。それで?」
「それで?えーっと、俺達より2つ年下です」
「うん。それから?」
「それから?えー、今、芹奈の代わりに社長秘書代理をしています」
「で?」
で、で?と、もはや村尾は言葉が続かない。
「えーっと、なんと申しましょうか。井口は、子犬みたいなキャラですかね?しっぽ振ってついて来そうな、可愛い弟分って感じです」
「その2つ年下で、可愛いしっぽフリフリの子犬みたいな井口くんが、里見さんに告白したと?その返事を今、まさにこの瞬間にも、里見さんは井口くんにしていると。つまりはそう言うことか?村尾」
「さ、左様で、ございます、副社長殿」
ダン!とビールジョッキをテーブルに置く翔に、村尾はビクッと身体を強張らせた。
「あ、あの、副社長?いかがなさいましたか?」
「村尾、俺、前にみなとみらいで話したよな?俺の知ってる欧米の女性はクールで淡々としてるが、里見さんは目をキラキラ輝かせて子どもみたいに感激してくれるって。俺はな、村尾。すっかりその日本女性の魅力に取りつかれたんだ」
「日本女性って……。副社長も日本人ですよね?」
「いや、違う」
「え?違うんですか?」
「日本女性だからではない!」
「あ、そっち」
「はっきり言おう。俺は里見さんに惚れている!」
ドドーン!と壮大な効果音が聞こえてきそうなほど、翔は胸を反らして断言する。
「そ、そうでしたか。それはそれは……」
「どうしてくれよう?村尾」
「え、どうにもこうにも……」
「今、まさに今!しっぽ振った子犬の井口くんが、里見さんの胸に飛び込んでいるのだとしたら?」
「あー、どうでしょうねえ?」
「お前はそれでも平気なのか!?」
「まあ、俺はそうですね……って、うぐっ、副社長!」
胸元を掴まれて、村尾は目を白黒させる。
「いけません。犯罪に手を染めては!秘書としてそんなことはさせられません!」
懸命に訴えると、ようやく翔は手を離した。
そしてグビグビとビールを煽る。
「どうしよう、今すぐ彼女を奪いに行きたい」
「ええー!?副社長、そんなに?いつの間にあいつのことをそこまで?」
「知らん。気づけば落ちているのが恋というものだろう?いや、湧き出でるこの気持ちは、もはや愛」
村尾は真顔に戻って身体を引き、キョロキョロと辺りを見回す。
誰かに聞かれるのが恥ずかしくて仕方なかった。
「村尾、教えてくれ。彼女はどうすれば俺に振り向いてくれるんだ?」
「ええ!?いやー、そんな。俺に聞かれても」
「彼女が言ってたんだ。アイラブユーとは言わない、シャイな人がいいって。けどダグラスが、好きな人に言われたら嬉しいに決まってるって言ったら、そうなのかな?って。どっちだ?アイラブユーって言ってもいいのか?だめなのか?」
「そ、それは。えーい!もう、言っちゃいましょう!」
「いいんだな?言っちゃうぞ?言ってもいいんだな?」
「いいともー!」
村尾はもはや、やけっぱちで叫ぶ。
やっかいなことになった、と心の中で頭を抱えながら……。



