楽しく食事を終え、テラスでソフトクリームを味わうと、次は豊洲に場所を移した。

「こっちはお台場よりも生活感が増しますね。マンションも多いし、スーパーマーケットもあってお買い物しやすそうです」
「そうだな。電車の利便性もいい」

ショッピングモールに入ると、やはりお台場とは違った雰囲気だ。

「観光客向けではなく、地元の人達が利用するようなお店が並んでますね。雑貨とか、洋服とかも」
「ああ。カップルだけでなくファミリーもターゲットにしているんだろうな」
「そうですね。広いからベビーカーも押しやすそうだし、外に広場もあっていいですね」

そんな話をしながら歩いているうちに、芹奈はふとイベントスペースを見つけて足を止めた。

「どうかしたか?」
「あ、はい。このスペースなんですけど……」
「うん、それが?」

翔と村尾も戻って来て三人で肩を並べる。
吹き抜けになったエスカレーター横のスペースに、客席やステージが設けられていた。
これから子ども達に人気のキャラクターのショーがあるらしく、たくさんの親子連れで賑わっている。

「こういったイベントスーペースってよく見かけますよね」
「そうだな。これだけ広いモールなら場所の確保も可能だし、集客も見込めるから、色んな企業がPRの場に活用していると思う」
「そうなんですけど、ちょっと変わった使い方をしてもいいかなと思いまして」
「例えば?」
「はい。誰でも気軽に参加出来るファッションショーはどうかな?って」

ファッションショー?と、翔と村尾の声が重なる。

「ええ。このモールは、お洋服やバッグや雑貨など、誰もが身近に手に取れるようなお店がたくさん入っています。それに小さなお子さまから中高生、パパやママも、みんなが欲しい物が買える。このモールで買ったお洋服を着てファッションショーに出られるとなったら、もっと楽しめるんじゃないかと思って」

翔は何かを考えながらじっと芹奈の話に耳を傾けていた。

「例えば時間を決めて、一日三回とか。ここで買ったものをどれか一つでも取り入れて、モデルとしてランウェイを歩くんです。見ている人が、あの服いいな!と思ったらすぐにそのお店に買いに行けますし、私もモデルをやりたい!って購買意欲が高まれば、お店の利益にも繋がります。話題性もあってここを訪れる人も増えると思いますし、今の流行の主な発信源はSNSですから、宣伝効果も期待出来ます」

うん、と翔が小さく頷く。

「それ、いいな。けどそのアイデア、他には教えてやんない。今度取り組む湾岸エリアプロジェクトの為にとっておこう」

そう言うとニヤリとほくそ笑む。

「それまで俺達だけの秘密な?」
「はい」
「よし。水面下で具体的なアイデアを練っておいてくれ」
「かしこまりました」

再び歩き始めるが、三人はファッションショーのことが頭から離れない。

「あの女の子なんて、買ってもらったばっかりのワンちゃんのリュック、嬉しそうに背負ってさ。もう今すぐステージに上がってポーズ取りそうだな」
「ふふっ、ほんとに。あそこの高校生の女の子達も、お揃いのアクセサリーと髪飾り選んで写真撮ってますしね」
「そこにいる家族連れ、親子でお揃いファッションじゃないか。いいなあ、幸せそうなステージになりそう」

休憩に入ったカフェでも、人間観察で盛り上がる三人だった。