「えっと?」
案内された部屋で、芹奈は戸惑いながら翔を見上げる。
「副社長、ここは?」
窓の外には綺麗な東京の夜景が見渡せ、広い客室は落ち着いたシックな色合いの家具が並び、洗練された雰囲気だ。
「俺が押さえてあった部屋だ。とにかくそのままではどうにも動けないだろう。シャワー浴びて来い。ドレスはクリーニングに出しておく」
「いえ、そんな。クロークから荷物を取って来て、着替えるだけで大丈夫ですから。副社長はすぐにバンケットホールにお戻りください。就任のご挨拶回りもあるでしょうし」
「パーティーの最後に壇上で挨拶するから構わない」
「そういう訳にはまいりません。副社長のお披露目の意味もあるパーティーですのに、主役の副社長がいらっしゃらないのでは」
「社長秘書が不在という訳にもいかないだろう。俺を早くパーティーに戻したいのなら、さっさとシャワーを浴びて着替えろ」
「あ、はい……。それでは失礼します」
芹奈は気圧されたようにバスルームへと向かう。
本当はワインで首筋や胸元がベタベタと気持ち悪く、すぐにでもシャワーを浴びたかったから助かった。
幸い髪はアップでまとめていた為、ワインもかかっていない。
良い香りのするボディーソープで身体だけ洗うと、バスローブを着て部屋に戻った。
翔はジャケットを脱いでソファに座り、パソコンに向かっている。
「あの、シャワー使わせていだたいてありがとうございました」
声をかけると、翔は顔を上げた。
「もっとゆっくりしても良かったのに」
「いえ、大丈夫です。それと重ね重ね申し訳ないのですが、クロークに私の荷物を取りに行くのをどなたかにお願いしたくて」
「着替えのことか?それなら必要ない」
は?と芹奈が首を傾げると、ピンポンと控えめな音でチャイムが鳴った。
翔がソファから立ち上がり、ドアを開ける。
「ああ、これで構わない。ありがとう」
ホテルのスタッフと短く話すと、すぐに部屋に戻って来た。
「サイズが合うかどうか、試してみて」
そう言ってベッドの上に、カバーが掛けられたドレスを3着並べる。
ブラック、ボルドー、ブルーの、どれも大人っぽく高級そうなドレスに、芹奈は呆然とするばかりだった。
「あの、これは一体?」
「君のサイズが分からないから、取り敢えず3着用意してもらった。着てみて」
「ええ!?副社長が私の為に用意してくださったのでしょうか?そんな、恐れ多くてとても……」
「君の為ではない。会社のパーティーが円滑に進むようにだ。副社長である俺も、社長秘書である君も、一刻も早くパーティーに戻らなければならない。違うか?」
「あ、はい。おっしゃる通りです」
「それなら、すぐに着替えて」
はい、と頷いて、芹奈は迷わずブラックのドレスを手に取った。
秘書である以上、着るものは控えめな色でなければいけないと常に考えているからだ。
パウダールームに戻って、早速着てみる。
「良かった、サイズはぴったり。って、ええ!?」
鏡に映る自分を見て、思わず驚きの声を上げた。
形はシンプルながらも胸元と両腕はシースルーで、身体のラインにピタッと沿うデザインは想像以上にセクシーだった。
「いや、ちょっとこれは無理。別のにしよう」
そう思い、芹奈は恐る恐る部屋に戻る。
翔が先程のようにソファでパソコンに向き合っているのを確認すると、そっとベッドに歩み寄り、ブルーのドレスを手に取った。
見つからないよう息を潜めたつもりが、カサッとカバーが音を立ててしまい、翔が振り返る。
「もう着替えたのか」
立ち上がって近づいてくる翔に、芹奈はひえっと身を固くする。
「サイズは大丈夫か?スタッフに、背が高くて痩せ型としか伝えなかったんだが、合うか?」
ブルーのドレスを抱えて身体を隠しながら、芹奈はブンブンと首を横に振った。
「それがどうにも大丈夫ではなくてですね。こっちのドレスに着替えて来ますね」
そう言って身を翻そうとする芹奈の手首をパシッと掴み、翔はブルーのドレスも取り上げる。
「なんだ、ぴったりじゃないか」
うええっ、と芹奈は妙な声を発してしまった。
「あの、色々問題なので他のにしてもいいですか?」
「別に何の問題もない。ほら、早くパーティーに戻るぞ」
「うっ、その、えっと」
ジャケットに腕を通すとズンズンと手を引いて歩く翔に連れられて、芹奈は会場のバンケットホールに戻った。
案内された部屋で、芹奈は戸惑いながら翔を見上げる。
「副社長、ここは?」
窓の外には綺麗な東京の夜景が見渡せ、広い客室は落ち着いたシックな色合いの家具が並び、洗練された雰囲気だ。
「俺が押さえてあった部屋だ。とにかくそのままではどうにも動けないだろう。シャワー浴びて来い。ドレスはクリーニングに出しておく」
「いえ、そんな。クロークから荷物を取って来て、着替えるだけで大丈夫ですから。副社長はすぐにバンケットホールにお戻りください。就任のご挨拶回りもあるでしょうし」
「パーティーの最後に壇上で挨拶するから構わない」
「そういう訳にはまいりません。副社長のお披露目の意味もあるパーティーですのに、主役の副社長がいらっしゃらないのでは」
「社長秘書が不在という訳にもいかないだろう。俺を早くパーティーに戻したいのなら、さっさとシャワーを浴びて着替えろ」
「あ、はい……。それでは失礼します」
芹奈は気圧されたようにバスルームへと向かう。
本当はワインで首筋や胸元がベタベタと気持ち悪く、すぐにでもシャワーを浴びたかったから助かった。
幸い髪はアップでまとめていた為、ワインもかかっていない。
良い香りのするボディーソープで身体だけ洗うと、バスローブを着て部屋に戻った。
翔はジャケットを脱いでソファに座り、パソコンに向かっている。
「あの、シャワー使わせていだたいてありがとうございました」
声をかけると、翔は顔を上げた。
「もっとゆっくりしても良かったのに」
「いえ、大丈夫です。それと重ね重ね申し訳ないのですが、クロークに私の荷物を取りに行くのをどなたかにお願いしたくて」
「着替えのことか?それなら必要ない」
は?と芹奈が首を傾げると、ピンポンと控えめな音でチャイムが鳴った。
翔がソファから立ち上がり、ドアを開ける。
「ああ、これで構わない。ありがとう」
ホテルのスタッフと短く話すと、すぐに部屋に戻って来た。
「サイズが合うかどうか、試してみて」
そう言ってベッドの上に、カバーが掛けられたドレスを3着並べる。
ブラック、ボルドー、ブルーの、どれも大人っぽく高級そうなドレスに、芹奈は呆然とするばかりだった。
「あの、これは一体?」
「君のサイズが分からないから、取り敢えず3着用意してもらった。着てみて」
「ええ!?副社長が私の為に用意してくださったのでしょうか?そんな、恐れ多くてとても……」
「君の為ではない。会社のパーティーが円滑に進むようにだ。副社長である俺も、社長秘書である君も、一刻も早くパーティーに戻らなければならない。違うか?」
「あ、はい。おっしゃる通りです」
「それなら、すぐに着替えて」
はい、と頷いて、芹奈は迷わずブラックのドレスを手に取った。
秘書である以上、着るものは控えめな色でなければいけないと常に考えているからだ。
パウダールームに戻って、早速着てみる。
「良かった、サイズはぴったり。って、ええ!?」
鏡に映る自分を見て、思わず驚きの声を上げた。
形はシンプルながらも胸元と両腕はシースルーで、身体のラインにピタッと沿うデザインは想像以上にセクシーだった。
「いや、ちょっとこれは無理。別のにしよう」
そう思い、芹奈は恐る恐る部屋に戻る。
翔が先程のようにソファでパソコンに向き合っているのを確認すると、そっとベッドに歩み寄り、ブルーのドレスを手に取った。
見つからないよう息を潜めたつもりが、カサッとカバーが音を立ててしまい、翔が振り返る。
「もう着替えたのか」
立ち上がって近づいてくる翔に、芹奈はひえっと身を固くする。
「サイズは大丈夫か?スタッフに、背が高くて痩せ型としか伝えなかったんだが、合うか?」
ブルーのドレスを抱えて身体を隠しながら、芹奈はブンブンと首を横に振った。
「それがどうにも大丈夫ではなくてですね。こっちのドレスに着替えて来ますね」
そう言って身を翻そうとする芹奈の手首をパシッと掴み、翔はブルーのドレスも取り上げる。
「なんだ、ぴったりじゃないか」
うええっ、と芹奈は妙な声を発してしまった。
「あの、色々問題なので他のにしてもいいですか?」
「別に何の問題もない。ほら、早くパーティーに戻るぞ」
「うっ、その、えっと」
ジャケットに腕を通すとズンズンと手を引いて歩く翔に連れられて、芹奈は会場のバンケットホールに戻った。



