「すごいですね。なんてゴージャスな雰囲気……」

案内されて店内に入ると、芹奈は思わず感嘆のため息をついた。

ゆったりとした空間に、緩やかなカーブを描くように配置された高級ソファ。

天井から下りている柔らかな布が生み出すドレープは美しく、まるでどこかの国の宮殿を思わせる。

燦然と輝くシャンデリアもさることながら、何よりも目を引くのは窓の外に広がる景色だった。

「空にも近いし、海にも近くて、素敵……」

うっとりと景色に魅入る芹奈の横顔に、気づけば翔は目が離せなくなっていた。

(なんだろう?女性ってこんな表情するんだ。少し儚げで、でも美しくて。控えめなのに思わず見惚れてしまう)

パッと分かりやすく感情を表現する外国の女性に慣れているせいか、翔の目には芹奈が特別な魅力を持つ女性に見える。

「なあ、村尾。日本の女の子ってやっぱり……」

小声で話しかけると、村尾は険しい表情で小さく首を振る。

「副社長。武勇伝はお控えください」
「なんだよ!?武勇伝って。俺は別に……」

すると芹奈が、ん?と二人を振り返った。

「どうかしましたか?」
「いや、何もない。芹奈、ほらドリンクメニュー」
「ありがとう」

村尾から受け取ったメニューを真剣に見ている芹奈の横で、村尾はもう一度翔に目で訴えていた。