「いやーもう。未だに信じられない。せめて俺には話しておいてくださいよ」
仕事終わりにマンションまで車を走らせながら、村尾はバックミラー越しに翔と芹奈をジロリと見る。
「ごめんね、村尾くん。あの、本当に急展開で、報告する暇もなくて……」
芹奈が詫びると、翔は窓の外を見ながらしれっと言う。
「全然急展開なんかじゃない。やっと想いが通じたんだ。俺は待ちに待ってたんだからな」
そう言ってさり気なく芹奈と繋いでいた手に、ギュッと力を込めた。
(う……、拗ねちゃったのかな?)
芹奈がチラリと横目で見ると、振り返った翔がにっこり笑う。
「芹奈。プロジェクトは村尾に任せれば安心だから、早く結婚式の準備しようか」
はいー!?と運転席から村尾が声を張った。
「副社長!ご冗談が過ぎますよ」
「冗談なもんか。村尾は知ってるよな?俺がどんなに芹奈のことを好きだったか」
「それは、まあ」
「なら、祝福してくれるよな?俺の想いがやっと結ばれたんだぞ?誰よりも村尾が喜んでくれるだろうなーって俺も……」
「分かりましたよ!やればいいんでしょ?やりますよ!プロジェクトも結婚式も、俺がドーンと取り仕切ってみせますよ!」
「おお、さすがは俺の片腕。頼りになるねえ」
満足そうに笑う翔の手を、芹奈はつんつんと引っ張る。
「ん?どうした?芹奈」
「本当にそんなことさせたらだめですからね?村尾くん、大変になっちゃう」
「分かってるよ。優しいな、芹奈は。でもちょっと妬ける」
そう言うと翔は素早くチュッと芹奈の頬にキスをした。
ひえ!と芹奈が身を固くしていると、すかさず村尾がミラー越しに声をかけてくる。
「あー!車内いちゃつき禁止!降ろしますよ?」
「目ざといな、さすがは村尾」
「今度はさり気なく芹奈の肩抱いてるじゃないですか!」
「危ないから前見て運転しろよ」
「気を散らせてるのは副社長ですよね?」
翔に肩を抱かれたまま、芹奈は身を縮こめる。
ようやくマンションに着くと、村尾に礼を言ってから二人で車を降りた。
エレベーターで部屋に向かう間も、翔は芹奈を抱き寄せて離さない。
(ほんとにこの人は、いつだって近いんだから。距離感ゼロ!)
でも、と芹奈は心の中で考える。
(告白を断っても、諦めずにずっと私に想いを寄せて、捕まえてくれた。恋愛に消極的だった私にグッと近づいて、心を解きほぐしてくれた。私にとっては、必要な距離感だったのかな?)
思わずふふっと微笑むと、翔が耳元でささやいた。
「なに?幸せそうに笑っちゃって。そんなに可愛いとキスするよ?」
そしてチュッと芹奈の唇にキスを落とす。
「ちょっ、ここエレベーターの中ですよ?」
「誰もいないよ」
「カメラついてます」
「大丈夫、俺はそんなの気にしないから」
「私は気にします!」
まったくもう、とため息をついてから、芹奈は思い切って素直な気持ちを伝えた。
「いつも私のそばにいてくれてありがとう。これからも、ずっとそばにいてね」
そう言うと背伸びをして、今度は芹奈から翔の頬にチュッとキスをする。
翔は驚いたように芹奈を見つめと、参ったとばかりに苦笑いした。
そして更に強く芹奈を胸に抱きしめる。
「覚悟しろよ?芹奈。片時も離さないから」
「うん!」
微笑みながら見つめ合った二人は、どちらからともなく顔を寄せて、チュッと口づける。
ポンとエレベーターの扉が開くと、翔はグッと芹奈の肩を抱き寄せて歩き出した。
芹奈もピタリと翔に寄り添う。
そう、この先もずっと、二人はいつも距離感ゼロ。
(完)
仕事終わりにマンションまで車を走らせながら、村尾はバックミラー越しに翔と芹奈をジロリと見る。
「ごめんね、村尾くん。あの、本当に急展開で、報告する暇もなくて……」
芹奈が詫びると、翔は窓の外を見ながらしれっと言う。
「全然急展開なんかじゃない。やっと想いが通じたんだ。俺は待ちに待ってたんだからな」
そう言ってさり気なく芹奈と繋いでいた手に、ギュッと力を込めた。
(う……、拗ねちゃったのかな?)
芹奈がチラリと横目で見ると、振り返った翔がにっこり笑う。
「芹奈。プロジェクトは村尾に任せれば安心だから、早く結婚式の準備しようか」
はいー!?と運転席から村尾が声を張った。
「副社長!ご冗談が過ぎますよ」
「冗談なもんか。村尾は知ってるよな?俺がどんなに芹奈のことを好きだったか」
「それは、まあ」
「なら、祝福してくれるよな?俺の想いがやっと結ばれたんだぞ?誰よりも村尾が喜んでくれるだろうなーって俺も……」
「分かりましたよ!やればいいんでしょ?やりますよ!プロジェクトも結婚式も、俺がドーンと取り仕切ってみせますよ!」
「おお、さすがは俺の片腕。頼りになるねえ」
満足そうに笑う翔の手を、芹奈はつんつんと引っ張る。
「ん?どうした?芹奈」
「本当にそんなことさせたらだめですからね?村尾くん、大変になっちゃう」
「分かってるよ。優しいな、芹奈は。でもちょっと妬ける」
そう言うと翔は素早くチュッと芹奈の頬にキスをした。
ひえ!と芹奈が身を固くしていると、すかさず村尾がミラー越しに声をかけてくる。
「あー!車内いちゃつき禁止!降ろしますよ?」
「目ざといな、さすがは村尾」
「今度はさり気なく芹奈の肩抱いてるじゃないですか!」
「危ないから前見て運転しろよ」
「気を散らせてるのは副社長ですよね?」
翔に肩を抱かれたまま、芹奈は身を縮こめる。
ようやくマンションに着くと、村尾に礼を言ってから二人で車を降りた。
エレベーターで部屋に向かう間も、翔は芹奈を抱き寄せて離さない。
(ほんとにこの人は、いつだって近いんだから。距離感ゼロ!)
でも、と芹奈は心の中で考える。
(告白を断っても、諦めずにずっと私に想いを寄せて、捕まえてくれた。恋愛に消極的だった私にグッと近づいて、心を解きほぐしてくれた。私にとっては、必要な距離感だったのかな?)
思わずふふっと微笑むと、翔が耳元でささやいた。
「なに?幸せそうに笑っちゃって。そんなに可愛いとキスするよ?」
そしてチュッと芹奈の唇にキスを落とす。
「ちょっ、ここエレベーターの中ですよ?」
「誰もいないよ」
「カメラついてます」
「大丈夫、俺はそんなの気にしないから」
「私は気にします!」
まったくもう、とため息をついてから、芹奈は思い切って素直な気持ちを伝えた。
「いつも私のそばにいてくれてありがとう。これからも、ずっとそばにいてね」
そう言うと背伸びをして、今度は芹奈から翔の頬にチュッとキスをする。
翔は驚いたように芹奈を見つめと、参ったとばかりに苦笑いした。
そして更に強く芹奈を胸に抱きしめる。
「覚悟しろよ?芹奈。片時も離さないから」
「うん!」
微笑みながら見つめ合った二人は、どちらからともなく顔を寄せて、チュッと口づける。
ポンとエレベーターの扉が開くと、翔はグッと芹奈の肩を抱き寄せて歩き出した。
芹奈もピタリと翔に寄り添う。
そう、この先もずっと、二人はいつも距離感ゼロ。
(完)



