距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

「お風呂先に入っておいで。明日に備えて早めに寝よう」
「はい」

促すと素直に頷いてバスルームに向かった芹奈に、翔はニヤリとする。

(芹奈が寝たら話しかけてみよう。寝ぼけた芹奈ちゃんと、またお話したい。クククッ)

だが翔の期待は泡と消える。

ベッドに入ってしばらくすると、芹奈はスーッと寝入ったのだが、どんなに話しかけても何も返事をしてくれないのだ。

(なぜだ?俺の可愛い芹奈ちゃん、どうして今夜は来てくれない?)

グズグズと諦め切れない翔は、冷静に考えてみた。

(前回って、どんなシチュエーションだった?確かあの時、芹奈はお酒に酔って身体が火照るからって、早めにベッドに入ったんだっけ)

今夜は車で出掛けたこともあり、お酒は飲んでいない。

(それでか!酔って眠ると現れるんだな、芹奈ちゃんは。よーし、それなら明日はほろ酔いにさせるぞ!)

リベンジに燃え、翔は芹奈をしっかりと抱きしめながら目を閉じた。