「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
店を出ると、芹奈は改めて翔にお礼を言う。
「どういたしまして。こちらこそ、つき合ってくれてありがとう。さてと。一度うちに寄ってもらっていいかな?車で送るよ」
「え?そんな。電車で帰れますから。それに副社長に運転させてしまって何かあったら、秘書としての立場がありませんし」
「勤務外なんだから、そんなこと気にしないで。じゃあ、行こう」
そう言って翔は背を向けて歩き出す。
芹奈は少し後ろを歩きながら、心の中で違和感を感じていた。
(副社長、いつもなら距離感ゼロでグイグイ肩を抱いてくるのに、今日はどうしたのかな?)
以前は肩を抱かれることにドギマギしていたが、今日はなぜか寂しく感じる。
(それに温泉宿も、誰と行くんだろう?)
下を向いて考え込んでいた芹奈は、翔が立ち止まったことに気づかず、ポスっと翔の背中に顔を突っ込んでしまった。
「大丈夫?」
「は、はい。すみません」
いてて……と芹奈が鼻に手をやっていると、翔がその手を握って顔を寄せてきた。
「見せて」
「いえ、あの。何ともないですから……」
「大丈夫そうだな。うん、可愛い」
そう言って芹奈の鼻の頭をチョンとつつく。
芹奈は一気に顔を赤らめた。
「ん?顔が真っ赤なのは、ぶつけたせいじゃないよな?」
「は、はい。違います」
「じゃあ、照れてるの?」
「そ、そうですね、はい」
素直に認めると、翔は、あはは!と笑って芹奈の頭にポンと手をやり、顔を覗き込んでささやく。
「今日も可愛いぞ?芹奈」
ブワッと芹奈の身体が一気に熱くなった。
(な、なに?今の。鼻チョンからの頭ポン!しかも至近距離で可愛いぞ?からの、芹奈呼び!)
あまりの合わせ技に、芹奈はノックアウトされてよろめく。
「どうぞ。乗って」
いつの間にかマンションの駐車場に着いていて、翔が白いスポーティーな車のドアを開けた。
「ありがとうございます。わあ、かっこいい車ですね」
「えっと、自宅の住所を教えてくれる?」
「あ、はい」
翔は芹奈が伝えた住所をカーナビに入力してから、ゆっくりと車を発進させる。
「副社長、普段から車は運転されるんですか?」
「たまにね。ドライブは好きなんだけど、日本の道路は走りにくくて」
「アメリカに比べたらそうでしょうね」
「ああ。でも明日の伊豆は車で行こうかな。いい気分転換になるし」
「あ、温泉……」
芹奈の頭の中で、先程の疑問が蘇る。
(温泉のペア宿泊券って、普通だったら彼女を誘うよね?えーっと、私は誘われてないし、そもそも彼女でもないし。はっ!もしかして副社長、気も合う身も合う、身体のお友達と!?)
両手で頬を押さえ、ドキドキする気持ちを必死で押し殺していると、「どうかした?」と怪訝そうな翔の声がした。
「いえ、あの。やっぱり欧米ではそんな感じなんですよね?」
そうだ。一夜を共にするくらい、どうってことないのだろう。
(だから副社長、私とも何度も同じベッドで寝たんだ。軽い気持ちなんだろうな。それに今まで何もなかったし。私は抱き枕で、夜のお友達はまた別にいるのかもね)
芹奈は、自分がひどく子どもじみているような気がした。
「大人の世界ですね……」
「ん?何が?」
「枕から見た恋人の定義です。私は、気持ちを確かめ合ってからじゃないと無理です」
は?と思わず翔は芹奈の方を見る。
「副社長、前を向いて運転してください」
「ああ、うん」
翔は、なんだ?と首をひねりながら、ハンドルを握っていた。
店を出ると、芹奈は改めて翔にお礼を言う。
「どういたしまして。こちらこそ、つき合ってくれてありがとう。さてと。一度うちに寄ってもらっていいかな?車で送るよ」
「え?そんな。電車で帰れますから。それに副社長に運転させてしまって何かあったら、秘書としての立場がありませんし」
「勤務外なんだから、そんなこと気にしないで。じゃあ、行こう」
そう言って翔は背を向けて歩き出す。
芹奈は少し後ろを歩きながら、心の中で違和感を感じていた。
(副社長、いつもなら距離感ゼロでグイグイ肩を抱いてくるのに、今日はどうしたのかな?)
以前は肩を抱かれることにドギマギしていたが、今日はなぜか寂しく感じる。
(それに温泉宿も、誰と行くんだろう?)
下を向いて考え込んでいた芹奈は、翔が立ち止まったことに気づかず、ポスっと翔の背中に顔を突っ込んでしまった。
「大丈夫?」
「は、はい。すみません」
いてて……と芹奈が鼻に手をやっていると、翔がその手を握って顔を寄せてきた。
「見せて」
「いえ、あの。何ともないですから……」
「大丈夫そうだな。うん、可愛い」
そう言って芹奈の鼻の頭をチョンとつつく。
芹奈は一気に顔を赤らめた。
「ん?顔が真っ赤なのは、ぶつけたせいじゃないよな?」
「は、はい。違います」
「じゃあ、照れてるの?」
「そ、そうですね、はい」
素直に認めると、翔は、あはは!と笑って芹奈の頭にポンと手をやり、顔を覗き込んでささやく。
「今日も可愛いぞ?芹奈」
ブワッと芹奈の身体が一気に熱くなった。
(な、なに?今の。鼻チョンからの頭ポン!しかも至近距離で可愛いぞ?からの、芹奈呼び!)
あまりの合わせ技に、芹奈はノックアウトされてよろめく。
「どうぞ。乗って」
いつの間にかマンションの駐車場に着いていて、翔が白いスポーティーな車のドアを開けた。
「ありがとうございます。わあ、かっこいい車ですね」
「えっと、自宅の住所を教えてくれる?」
「あ、はい」
翔は芹奈が伝えた住所をカーナビに入力してから、ゆっくりと車を発進させる。
「副社長、普段から車は運転されるんですか?」
「たまにね。ドライブは好きなんだけど、日本の道路は走りにくくて」
「アメリカに比べたらそうでしょうね」
「ああ。でも明日の伊豆は車で行こうかな。いい気分転換になるし」
「あ、温泉……」
芹奈の頭の中で、先程の疑問が蘇る。
(温泉のペア宿泊券って、普通だったら彼女を誘うよね?えーっと、私は誘われてないし、そもそも彼女でもないし。はっ!もしかして副社長、気も合う身も合う、身体のお友達と!?)
両手で頬を押さえ、ドキドキする気持ちを必死で押し殺していると、「どうかした?」と怪訝そうな翔の声がした。
「いえ、あの。やっぱり欧米ではそんな感じなんですよね?」
そうだ。一夜を共にするくらい、どうってことないのだろう。
(だから副社長、私とも何度も同じベッドで寝たんだ。軽い気持ちなんだろうな。それに今まで何もなかったし。私は抱き枕で、夜のお友達はまた別にいるのかもね)
芹奈は、自分がひどく子どもじみているような気がした。
「大人の世界ですね……」
「ん?何が?」
「枕から見た恋人の定義です。私は、気持ちを確かめ合ってからじゃないと無理です」
は?と思わず翔は芹奈の方を見る。
「副社長、前を向いて運転してください」
「ああ、うん」
翔は、なんだ?と首をひねりながら、ハンドルを握っていた。



