距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

「今年もお疲れ様でしたー!乾杯!」

グラスを合わせて乾杯し、あとはひたすら食事とおしゃべりを楽しむ。

お酒が入るとだんだん饒舌になり、皆の爆弾発言が相次いだ。

「えー、プロポーズされたんですか!?」

菜緒が、30代の先輩に詰め寄っている。

「そうなの。クリスマスイブにね」
「それでそれで?お返事はもちろん、オッケー?」
「うん、まあね」
「きゃー!おめでとうございます」

周りからも拍手が起こる。

「ありがとう。結婚しても仕事は続けるから、これからもよろしくね」
「もちろんです!それにしても、クリスマスイブにプロポーズなんて、素敵ですね」

うっとりと両手を頬にやる菜緒とは対照的に、芹奈は冷静に隣の席の村尾に話し出した。

「やっぱりクリスマスってすごいわよね。ここから経済が更に動くのよ」
「またそれかよー?ほんとに色気の欠片もないな」
「だって私、肌で感じたの。クリスマスのカップル事情。もうジュエリーショップもレストランも、そこかしこで盛り上がってたし」

すると菜緒が何やらモジモジしながら井口に近づくのが見えた。

ん?と思っていると、二人でヒソヒソと言葉を交わしてから皆に向き直った。

「えっと、皆さん。実は私達、おつき合いすることになりました!」

えー!?と一斉に声が上がる。

「菜緒が?井口くんと?」
「ひゃー!なんか、お似合いかも」

そんな中、芹奈はまたしても冷静に村尾に呟く。

「やっぱりね。私の睨んだ通りよ」
「え、芹奈、気づいてたのか?」
「もちろん。私、経済効果とカップルの動きについてはスパイ活動してたから」
「は?何言ってんだ?」
「とにかく良かったわ。落ち着くところに落ち着いたって感じで。お似合いだもん、あの二人」
「ああ、そうだな」

芹奈は幸せそうな井口と菜緒に、心の中で「おめでとう」と祝福した。