距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

「わあ、クリスマスのムード満点ですね。とってもロマンチック」

フレンチレストランに着くと、芹奈はクリスマスツリーやイルミネーション、テーブルの上で揺れるキャンドルにうっとりと見とれる。

「私、こんなオフィススタイルで来てしまって。ドレスコード大丈夫でしょうか?」

周りのカップルはいかにもデートという装いで、芹奈は気後れした。

「もちろん大丈夫だよ。日本女性って、そもそもいつもオシャレだし」
「そうなんですか?でもパーティーでは外国の方の装いってすごくゴージャスですけど」
「まあ、パーティーではね。だけど普段はかなりラフだよ」

そう言って翔は優しく芹奈に笑いかける。

「君はいつだって綺麗だよ。何を着ても、どこにいても」

途端にスイッチが入ったように芹奈の顔は赤くなる。

「副社長。視察のお芝居まだ続いてるんですか?」
「ん?まさか。純粋にそう思ってる」

そうですか、と芹奈は気まずそうにうつむいた。

「ひょっとして忘れてた?俺が君を好きで、今君を口説くのに必死なこと」
「あ、えっと、そうですね」
「じゃあ、思い出させてあげる。俺は君の全てが好きなんだ。明るい笑顔も、優しい微笑みも、真剣に仕事をしている横顔も、ちょっと勝気だったり、時々拗ねたりするところも。一番好きなのは、寝起きの君かな?目がトロンとしてて無防備で可愛い。あと、ミーアキャットになった時も……」
「あ、あの、副社長。もう結構ですから」
「そう?それならイエスの返事をくれる?」
「いえ、それは……」
「頷いてくれるまで続けるよ」

いえいえ、本当に、と手で遮った時、オーダーしたワインが運ばれてきた。

「まあ夜は長いし、気長にいこう。それじゃあ、メリークリスマス」
「メリークリスマス」

二人はグラスを合わせてから、美味しいワインを味わった。