距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

「ディナーは予約してあるんだ。行こう」

ジュエリーショップをあとにしてホテルへと歩き出した翔に、芹奈は驚く。

「副社長。クリスマスの夜によく予約が取れましたね?」
「うん、まあ、コネクションを嫌々使ってね」

嫌々?と芹奈は首をひねる。
だが前方に見えてきたホテルに、なるほどと頷いた。

「ハーイ!セリーナ。メリークリスマス!」

エントランスに入るなりダグラスに抱きつかれて、芹奈は苦笑いを浮かべる。

「こんばんは、ダグラスさん。メリークリスマス」
「君にこうして会えるなんて、何よりのクリスマスプレゼントさ」

芹奈にハグとチークキスを繰り返すダグラスを、翔が後ろからベリッと引き剥がす。

「もういいだろう、ダグラス」
「いや、もうちょっと」
「もう充分だ!」
「ん?今夜の予約を取ってやったのは誰だっけ?」

うっ……と翔は言葉に詰まる。
芹奈はダグラスににっこり微笑んだ。

「ダグラスさん、クリスマスなのに融通利かせてくださってありがとうございます」
「いいんだよ。セリーナの為ならこれくらい。今度俺とデートしてくれたらそれだけで」
「ふふっ、ダグラスさんお世辞も上手」
「お世辞じゃないよー。本気だよー」

そう言ってダグラスがまたしても芹奈に抱きつこうとすると、翔は慌てて芹奈の肩を抱き寄せた。

「ほら、もう行こう。予約の時間だから」
「はい。それじゃあ、ダグラスさん。素敵なクリスマスを」

手を振る芹奈に「君もね、セリーナ」とダグラスは投げキッスをする。
翔はグイッと芹奈の肩を抱いてキスを避けると、スタスタと歩き始めた。