距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

コンコンとノックの音がして、「どうぞ」と翔は返事をする。

「失礼いたします」

入って来たのは芹奈だった。
朝マンションを出た時のスーツとは違い、アイスブルーのフレアスカートとオフホワイトのジャケット姿が大人っぽく美しい。

「お呼びでしたので参りました」
「ああ、ソファで待っててくれる?すぐ終わるから」
「はい、かしこまりました」

スッとソファに腰掛けた芹奈に、翔はチラリと視線を向けた。
バッグから取り出したタブレットを見ている真剣な表情は、キリッとしていて惚れ惚れする。

翔はパソコンをシャットダウンしてから立ち上がり、ジャケットに腕を通してコートを着た。

「お待たせ。行こうか」
「は?どこへ、でしょう?」
「ショッピングモールの視察。クリスマスの様子を見ておきたいんだ。君につき合ってもらえたら嬉しいんだけど、他に予定があったかな?」
「いえ、特には」
「じゃあ、食事がてら見に行ってもいい?」
「承知しました」

タクシーに乗ると、翔は「みなとみらいまで」と告げる。

(ええー!?そんなところまでタクシーで?すごい金額になっちゃう!)

そう思い、芹奈の頭の中はまた経済効果のことで一杯になった。

「副社長も、クリスマスにおける経済の動きに関心がおありなんですか?」

は?と翔は眉根を寄せるが、芹奈は真剣な表情で返事を待っている。

「ああ、そうなんだ。一年で最もお金が動く日かもしれないよな。その影響たるや、数字的にもすごいと思う」
「ですよね!私、今日はずっとそのことを考えていたんです。これから街に行って、肌でその感覚を確かめたいです」
「なるほど、ぜひそうしよう」

おかしなことになったと思いつつ、こうして二人で出掛けられることに翔はほくそ笑んでいた。