距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

イブに引き続きクリスマス当日も、社員達はソワソワと楽しそうに浮足立っている。

「あー!その指輪、夕べ彼にプレゼントされたの?」
「うん、実はそうなんだ」
「キャー!ってことは、プロポーズ?」
「えへへ、うん」

そんな会話が昼休みの社員食堂で聞こえてきた。
よく見ると、そんな女子は1人や2人ではない。

「すごいねえ。クリスマスの経済効果ってどれくらいなんだろう?」

芹奈が感心すると、向かいの席でカツ丼を食べていた村尾がブホッとむせ返った。

「芹奈。いくら恋愛に縁遠いからって、経済評論家みたいなこと言うな。ロマンチックの欠片もないな」
「だってさ、考えてみてよ。ホテルもレストランも軒並み予約で一杯。クリスマスケーキやチキンも飛ぶように売れるでしょ?極めつけはジュエリー!もうさ、各業界、売り上げはホクホクよね」
「やれやれ……。芹奈、オヤジ化してきたな。恋する乙女になれとは言わないけど、せめて20代女子には戻って来い」

はーい、と軽く返事をして、芹奈はまた人間観察を始める。

「あ、ファッション業界もウホウホよ。だって女の子達、服も新調してオシャレしてるもん。美容室とか、ネイルサロンも」
「はいはい、もう分かったよ。経済評論家のオッサン芹奈さん」
「それにね、ブライダル業界も!年が明けたら一気にブライダルフェアが賑わうって聞いたよ。ほら、プロポーズされたら次は結婚式の準備じゃない?ひゃー!日本の経済が大きく動くのね」
「もう呆れてものが言えん。芹奈、クリスマスに株の動きとにらめっこはするなよ」
「ああ、気になるね。見てみようかな」
「やめれー」

華やかな女子達の雰囲気の中、芹菜は淡々と周りの様子を観察していた。