「おはよう。目が覚めた?」

翌朝。
ぼんやりと目を開けた芹奈は、間近に迫る翔の整った顔に驚いて後ずさる。

だが翔は、芹奈を腕枕している手に力を込めてグッと肩を抱き寄せた。

「ミーアキャットも可愛いけど、近くで見る君の寝起きの顔はもっと可愛い」
「あ、あの副社長」
「なに?」
「ちょっと離れてください。朝から心臓に悪くて……」
「ん?顔が赤いね。まだのぼせてるのかな?」

そう言って翔は、芹奈とコツンとおでこを合わせる。

「熱はないね」
「いやいや、副社長!わざとやってますよね?」
「あ、バレた?」
「もう!」

芹奈がムーッと拗ねると、翔はおかしそうに笑い出す。

「最高に幸せな朝だな。それにぐっすりよく眠れた」
「それはよろしゅうございました。抱き枕としては最高品質を自負しております」
「ははは!うん。けど俺専用の抱き枕だからな?」

そう言って芹奈の鼻の頭をチョンとつつくと、翔は、うーん、と伸びをする。

「6時か。そろそろ起きる?って、まだ顔赤いな。熱測る?」

再びおでこをくっつけようとする翔に、芹奈はガバッと起き上がった。

「熱はございません!ご心配なく。それでは、着替えて参ります!」
「はーい。行ってらっしゃーい」

スタコラとバスルームに向かう芹奈を、翔はヒラヒラと手を振って見送った。