【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

 人格を入れ替える魔法なんて、あるのかしら? あとで図書館で調べてみましょう。

「ねえ、それより聞きたいことがあるのだけど……。マーセルとマティス殿下が婚前交渉をした場合って、わたくし、慰謝料を請求しても良いかしら?」

 首をかしげて問うと、クロエはふっと微笑みを浮かべて「もちろんですわ」と答えてくれた。

 そうよね、良いわよね。……その前に、元の身体に戻ることを考えないといけないけれど、ね。

「わたくしはこれから、『マーセル』の評判を上げるわ。逆に、マーセルは『わたくし』の評判を落とすでしょう」

 マーセルがわたくしの評判を上げられるとは思わない。でも、わたくしは彼女の評判を上げることができるはず。公爵家の令嬢として、生きてきたわたくしには。

 彼女には、がんばってわたくしの評判を落としてもらわないといけないわね。マティス殿下との婚約を白紙にしてもらうために。

 ――わたくし、彼の妻になるのは絶対にいやだわ。そして、公爵家の生贄になるのも、絶対にいや。勘当されたいほどに。

 そのために……しっかりと公爵家を振り回してちょうだい、マーセル。

 慰謝料は、しっかりと請求させてもらうけれどね!