【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

 腕を引いたのはレグルスさまだった。確かに人が多く行き()う王都。たくさんの人が歩いている。

 こんなふうに(かば)われるのも初めてで、なんだか本当にわたくしとマティス殿下って、形だけの婚約者だったのね。

 いや、そもそもこんなふうに彼と歩いたことさえないわ。『デート』なんてしたことないし、誘ったことも誘われたこともない。

 ただ、パーティーで一緒に踊る……くらいの関係だもの。

 ……婚約者とは……?

「どうかした?」
「いえ、なんというか……振り返ってみて、やっぱり無理だな、と」
「それは……どういう意味?」

 ひっそりと言葉を続けた。誰にも聞かれないように。

「マティス殿下とこんなふうに歩いたことがなかったので……やはりわたくしには、殿下との婚約は無理だな、と」
「……そうか。俺と婚約したら、たくさんデートしようね」

 え? と目を丸くすると、レグルスさまは悪戯(いたずら)っぽく笑って、わたくしの腕から手を離した。

 顔が熱いわ。赤くなっていそう。

 冷まそうと思って、手の甲を頬に押し付けた。ぽん、とクロエがわたくしの肩に手を置いて、微笑む。

「行きましょう、雑貨店」
「え、ええ……そうね」

 なんだかドキドキさせられているような気がする。

 公爵令嬢ではないかもしれないわたくしに、どうしてそこまで優しくしてくれるの……?