「私が嫌がらせを受け始めたのは、入学から間もなくです」
「なんですって?」
「……一度、失敗をしてしまって。それから……『なにもできないヤツ』って……」

 いったいどんな失敗をしたのかしら……? マーセルはどんよりとした雰囲気で黙り込んでしまった。

 どんな失敗をしたかは、聞かないことにしましょう。聞いたら、面倒そうな予感がする。

 わたくしがマーセルの話を聞いたところで、解決するとは思わない。

 とにかく、わたくしがやることは、一ヶ月のあいだにマーセルの評判を高め、なぜわたくしたちが男爵家と公爵家という身分差のある家に引き取られたのかを調べる。

 一度、男爵家に行ったほうが良いのかもしれない。マーセルに優しい両親だったのなら、教えてくれるかもしれないから。

「……(なげ)かわしいわ……」

 貴族のどろどろとした感じが、ここにまで来ているなんて。

 学園は夢と希望を持つ場所と言われているのに、その実態はこうだもの。

 平民たちのあいだにも、こういうことはあるのかしら? それにしても、本当に嘆かわしい。国を背負い、平民たちを導く貴族が、こんなことをしているなんて。

「どうしたら、カミラさまのように強くなれるのですか……?」
「あら、わたくしは強くなくてよ。そう見せていただけ。『完璧な公爵令嬢』でなければ、価値がなかったから」

 自分で言っていて、虚しくなってきたわ。