【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

「そろそろ時間だね。ブレスレット、取りにいこうか」
「……はい」

 目を閉じて、再び開けたレグルスさまのまなざしはいつものように優しく、こくりと首を縦に振って宝石店に戻る。

 気が付いていなかったけれど、結構な時間を過ごしていたみたい。

 レグルスさまと一緒にいると、時間があっという間に過ぎていくのね。

 宝石店に戻り、レグルスさまが「ちょっと待ってて」とわたくしを入口に待たせて中に入り、すぐに戻ってきた。

「カミラ嬢、もうちょっと付き合ってくれる?」
「え、ええ」

 日が暮れ始めたけれど、まだ明るいのでホテルに戻るのはもったいないな、と考えていた。だから、レグルスさまに私の心が見透かされたのかと考えたわ。

 でも、彼はほっとしたように表情を(ほころ)ばせて、わたくしの手を取って歩き出した。

 どこに行くかは告げずに。

 わたくしはただ、レグルスさまに連れられて歩くだけ。

 夕日が辺りをオレンジ色に染めている。どこまで行くのだろうと思っていたら、レグルスさま「ちょっと失礼」とつぶやいてからわたくしを抱き上げた。

「きゃあっ」
「ちょっと急ぐから、しっかり掴まっていて」

 え? と聞き返す前に、レグルスさまが魔法を使って走り出した。そのスピードがすごくて、思わずぎゅっと彼に抱きついてしまう。

 だって、そうしないと落ちちゃいそうなんだもの!

「間に合った!」
「……?」

 トン、と軽い音を立てて、どこかに到着したらしい。レグルスさまの視線を追うように顔を向けると――オレンジ色の夕日が海に沈んでいくのが良く見えた。

「……きれい……」
「今日、晴れていて良かった。この光景、見せたかったんだ」

 沈んでいく夕日をじっと眺めていると、そっとレグルスさまがわたくしを下ろした。真っ直ぐに身体を向けてきたので、わたくしも同じように彼と向き合う。

「これを、きみにつけていいかい?」

 ホワイトコーラルとヒスイのブレスレットを見せてくれた。小さくうなずくと、そっとわたくしの左手にブレスレットを通した。左手首にぴったりのサイズのようで、なんだかどんどんと頬に熱が集まっていく。

「……大事にします」
「うん。――カミラ嬢。リンブルグでいろいろなことがあると思う。でも――俺は、きみを妃にしたい。ずっと俺が愛すると誓うから――」