【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

 一人一人、自分とは違う人生を歩んでいる人たち。

 今までずっと、鳥かごの中で暮らしていたのだと、改めて思い知った。

「貴族だけが生きているわけでは、ないのよね……」
「はい。貴族よりも平民たちのほうが多いですからね」
「そうね」

 畑を(たがや)す人、山に薬草を()りにいく人、川辺で魚を()る人……こういう人たちに支えられて生きているのよね。

「わたくし、上辺(うわべ)だけしか知らなかったのね……」
「貴族の大半はそうだと思いますよ。カミラさまはまだ未成年ですし、知る余裕もなかったでしょう?」
「それを言われると、確かにそうなのだけど……知ろうとも知らなかったのよね、わたくし」
「なら、これから知っていけばいいと思います。そのために、レグルスさまはゆっくりと国を回っていると思いますよ」

 家族に愛されるために勉強や教養をがんばっていたわたくしは、頭がそのことでいっぱいだったの。だから、平民たちの暮らしをこうしてしっかりと見て回ることで、新鮮な気持ちになったわ。

 学園を出てから、ずっと新鮮な気持ちが続いている。

 レグルスさまとブレンさまが、いろいろ教えてくださるから。

「私もこんなにゆっくりするのは初めてなので、楽しいです」

 ふふっと笑うクロエに、「そうね」と言葉を返した。