「とはいえ、一騎打ちは正々堂々とやるべき、だろう?」
「もちろん。そこはきっちりと、な。一度本気のマティス殿下と戦ってみたかったんだ」
「ほう」

 挑戦的に口角を上げるレグルスさまに、マティス殿下は同じように笑みを浮かべる。

 バチバチと二人のあいだに火花が散っているような気がする。……どうしてそこまで好戦的なのかしら?

 わたくしは置いてけぼりのような気がして、ゆっくりと息を吐いた。

「一騎打ちの日時は?」
「――近々パーティーがあるだろう? そのときに。互いに盛り上げようじゃないか」
「父上が許可すると思うか?」
「ベネット公爵が掛け合っている」
「……そうか。ならば、詳細は後ほど連絡するとしよう」

 マティス殿下はこちらをちらりと見てから、屋上から出ていく。

 ――とても鋭い眼光だった。

 屋上の扉が閉じるのを見て、わたくしとレグルスさまは顔を見合わせて、微笑み合った。

「……カミラ嬢、本気にするよ?」
「えっ?」
「『それも悪くないと思っております』って言葉」

 パチンとウインクするレグルスさまに、思わず目を(またた)かせて、それからくすくすと声に出して笑ってしまった。彼の瞳が、少し揺れているのに気付いたから。

 自信満々に言っていたのに、ちょっと不安がっているようで……そんなところが、なぜか愛しく思えた。