【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

「私、退職届を出そうと思うんです」
「え?」
「一ヶ月後、カミラさまと一緒にいられるように」

 ――思わず、目を大きく見開いた。

 彼女の表情は真剣そのもので……その気持ちが、決意が、わたくしに伝わってくる。

 クロエの真摯(しんし)なまなざしを受けて、小さく首を縦に振る。彼女の決意は固いみたいだ。

 その決意の固さに反して、表情は柔らかい。

 わたくしに姉がいるとしたら……こんな感じなのかしら?

 お兄さまとは会話すらあまりなかったから……

「……本当に、いいの?」
「もちろんですよ。楽しみですね」
「……そうね」

 一ヶ月後、わたくしたちはどういう関係になっているのだろう?

 マーセルの身体になってから、自分でも知らなかった感情が湧きあがる。

 自由に生きてみたいと、心の底から思えるようになったのは、ある意味成長……なのかしらね?

 公爵邸にいた頃には思えなかった。

 ずっといろいろなことに追われていたから、そんなことを考える余裕がなかったもの。

 わたくしがわたくしでいられることが少なかったから、考えることをやめてしまった。だからこそ、考えていきたい。

 わたくしにできることを――……