名も無き君へ捧ぐ


園子に支えられながら帰宅すると、汐里の母はその娘の姿に驚いた。


泣きじゃくり、2つに結んだ髪の毛もボサボサで服も泥だらけだ。



園子はさっきの出来事を汐里の母に全て伝えた。






泥まみれの服を母が着替えさせても、汐里はなかなか泣き止むことはなかった。



擦りむいた肘と膝。

頬にも細かな傷がある。

消毒の手当をしながら声を掛ける。




「汐里....。お母さんね、汐里がしたこと、すっごく嬉しい。かっこいい」

「うう、、ひっく、ひっく」

「でもね、あなたが怪我をしてまで頑張らなくていいのよ。怖かったね。大丈夫、大丈夫だから」


母は汐里をそっと抱きしめた。


「お母さんね、いい考えがあるの」

「いい考え?」

「うん。汐里達もお花も、みんな、きっと笑顔になる」



その言葉に汐里はピタリと涙が止まった。