名も無き君へ捧ぐ


「ふふふ、君ってすごい人なんだね。いやぁ、有り難い有り難い。お礼にこのケーキをお召し上がりください。ワインもどうぞ」

ケーキとワインのボトルをすすっと差し出す。

「話聞いてました?僕、守護霊なんです。普通に食べれませんよ」

「ですよねー!いっけね、私としたことが、失敬失敬。ははは、そうだそうだ、ユーレイさんは食べれない!ははは」

やれやれと呆れた表情を浮かべながら、守護霊は向かい合わせに座る。


「ちゃんと感謝して欲しいんですけどねー」


そう言いながら、私のフォークを取るなりケーキに差し入れる。

「では、遠慮なく、いっただきまーす」

パクっと頬張る守護霊。
仏頂面だった顔がふにゃっと綻ぶ。
やはりどこか可愛いのが憎い。

「おーいひー」

「ちょ、ちょっと、食べれないんじゃなかったの?」

身を乗り出す。

「うーん。基本的には?」

「意味が分からない。全然分からない」

「まあまあ、いいじゃないすか。今日誕生日なんでしょ?おめでとうございます」

「あ、ありがとう。いや、そうじゃなくて、そうなんだけど....」


完全に相手のペースに飲まれている。
酔いも回ってかどんどん思考が鈍る。