名も無き君へ捧ぐ



目を覚ますと、西日が部屋に差し込んでいた。



いつの間に眠っていたのだろうか。

取り込んだ洗濯物はたたみかけだ。



視界の隅でふと目に留まる。
棚の奥に閉まっていたCDが1枚、床に落ちていた。


「あれ?そういえば、今日棚の整理してたんだっけ?」


拾いにいくと、その傍で桜の花びらが落ちていた。


「桜だ。どうしてこんなとこに。洗濯物に付いてたかな」





手のひらに乗せると、ふと懐かしい気分になった。


随分長い夢を見ていた気がした。

満開の桜並木を歩き、幸せに包まれる、そんな夢。


隣に誰か居たはずだけど、思い出せそうで思い出せない。



「不思議な夢....」






私は懐かしい柔らかい温もりが心地よく、花びらをしばらく眺めていたのだった。