名も無き君へ捧ぐ

「はい。僕はもう、人間の姿になる縁は無いんです。あの時に決めたんです。この子の命を護れる存在になりたいって」

「もう冬弥とは、生まれ変わっても、何度生まれ変わっても、何度も何度も生まれ変わったとしても、会えないの?」

「はい」


彼は微笑む。

私は繋いでいた手を振り払った。



「バカ!何で笑うの!........なのに、私冬弥のことが好きなんだよ。ダメだよ、そんなの勝手過ぎるよ。どうしてそこまでして...」


込み上げた涙がとめどなく溢れた。


冬弥は私を引き寄せ抱きしめた。



「それまで居なかったんです。初めてでした。綺麗だって、可愛い花だって、杏さんは言ってくれました。僕を守ってくれた杏さんはあまりにもそそっかしくて、危なっかしくて、おまけに泣き虫で....、放っておける訳ないじゃないですか」

「私、普通に巡り会いたかったな....。それってわがまま?」