名も無き君へ捧ぐ


午前10時。



遅い起床。


平日の休日。


肌寒さに余計億劫になる。



大きな欠伸一つしながら、洗面台で蛇口のレバーを引きお湯を出す。


鏡に映る浮腫んだ顔にしかめっ面をした。
明日休みだからって、つい飲んで寝てしまった。


(雨はやんだことだし、今日は溜まってた洗濯物いっぺんに干すか....)




バシャバシャッ



顔を洗い、鏡に映る自分を見ながら顔を拭く。


「ん?」


ぼんやりと映る人の影。
背後に誰かの気配。


気のせいか。

寝ぼけてたのかも。



もう一度顔を拭く。

もう一度鏡を見る。


すると、右肩辺りに20代半ばほどの男性の姿。
髪の毛のキューティクルが光り輝く。
鏡越しに目が合うなり、にかっと悪戯に微笑む。



「....きゃーー!出た!」


洗面台から飛び退き、勢い余って壁にぶつかる。

ドンッ



「痛っ」

「久しぶりですね、ベタな反応。それにしても酷いなー、人を化け物みたいに。まぁ、ユーレイなんですけどね。肩、大丈夫ですか?」

「と、と、冬弥?」


心臓がバクバクいっている。
驚きとそれ意外で。