名も無き君へ捧ぐ


(こ、こんばんは....)


心の中でそっと呟く。


(あいつはいないんですね)


どうやら、心の中での会話は成立するらしい。
冬弥のお陰ですっかり妙な特技になってしまった。


(あ、冬弥のこと?今、先祖会議で出かけてるよ)

(とーや?ふーん。名前まで付けてるのね。ていうか、どんだけ親しくなってるのよ)

(えーっと....)


会ったのが2回目というのが信じられない程の馴れ馴れしさ。
それに口が立つ。
勢いに圧倒されてしまう。


(先祖会議って言ったわよね。この時期に守護霊が直々に呼び出されるなんて、ただ事じゃないわ)

(えっ、そうなの?)

(守護霊が視えることそのものが、まともじゃないものね。視えるようになった原因だって、知っているのでしょう?)

(そうですね。原因は私にあるので)


図星過ぎて耳が痛い。


(私の主様は1度だって自ら死を考えたことはないわ。
きっともう....。いえ、何でもない。これは私の口から言うことじゃないわね。だからね、私の姿を知らないし、知ることもないわ)

(この先も、ずっと?)

(ええ。死を迎えるその時までね)



強気な眼差しからふと、寂しげに視線を落とす。