名も無き君へ捧ぐ


キョロキョロ周りを見渡したが、やはり今冬弥は姿を消している。
すぐ側にいるのだろうけど。
後ろめたさが拭えない。


帰りに甘いもの、買っていこうと決めたのだった。





探しものの彼の名前は相模遥(さがみ はる)はるというそうだ。

年齢は私の3つ上。

同世代としても、やはり落ち着いている雰囲気だ。





「今日は本当にありがとうございました。ご親切にしていただいて」

「いえいえ。こちらこそ、ご一緒にパンケーキ食べれて嬉しかったです。美味しかったですね。ありがとうございました」

「ええ。本当に。では、....さよなら」

「さよなら」


少し言葉に詰まったのが気になったが、そのまま別れ、反対方向へと歩き出そうとしたその時、

突然小学生くらいのツインテールの女の子が目の前に飛び込んできて、私を見るなり睨みつけたのだ。


「あっかんべーだ!」


そう叫ぶなりふっと姿が消えた。



「へ??」


360度見渡してもどこにも居ない。

唖然。
どこから来た子?
お店にいた?
一瞬の出来事とはいえ、聞き間違い見間違えにしては姿も声もハッキリしている。

気のせいなどには出来ないし、かと言ってどう説明がつく?