名も無き君へ捧ぐ


その先で、1人の女性と親しげに話しこんでいた。
彼女はギュッと元彼の腕に絡みつくと、笑顔を向け手を振ってその場から去っていった。


こちらに引き返してくる。

私はとっさに違う方を向きおもむろに携帯を出す。


「あれ、(あんず)じゃん。久しぶり。これから仕事?」

「ああ、うん。久しぶりだね」

「そっか、まだあの仕事続けてるんだね。俺、もうすぐここから引っ越すんだ」

やめて、やめて、やめて、
止まれ私の口。

「もしかして、さっきのあの女の人と結婚とか」

「うわー、見られてたか。そうそう。来月籍入れる予定」


終わった....。


「おめでとう!よかったね!あ、私そろそろ行かないと、じゃあね、お幸せに」

「おう」


わざとらしかったかな?

でも一刻もあの場から早く逃げたかった。
何で知りたくも無いことつい聞いちゃうんだろう。


そっか、なるほど。
この事だったのか、守護霊君。
やっぱり君の言うこと守っておけばよかった。


心の中までお見通しって、余計なお節介だ。


でもそのお節介がいかに大事だったのか、ズキズキ痛む心の傷に響く。

これからは素直に言うこと守ろうと誓ったのだった。